2023年6月3日行われた日本魚類学会市民公開講座の内容のまとめ。
オオガタスジシマドジョウ
============第一部============
●福岡県保健環境研究所 中島 淳さん
まずは福岡県保健環境研究所 中島さん(途中から見た)。「種の保存法」の指定解除の条件に触れていたり、逆に採集や飼育を禁ずることにより生じるデメリットなどの意見も明らかになるなど「環境省などの行政マンセー」「法令マンセー」になりがちなこのようなシンポジウムの中では異質であった。一方、指定されないと生息環境の改変が行われる危険性なども発言があり、これが大きな問題になりうるかもしれない。今後は指定種以外の生息環境も保全できるようにしなければならない。
●月間アクアライフ 山口正吾さん
彼は元「月刊アクアライフ」の編集長の方。おもに「月刊アクアライフ」誌でかつて日本産淡水魚の記事をくんだ際の記事を掘り返していたり「Googleフォーム」でアンケートをとった際の結果についての記述もあった。
日本産メダカ類については、彼は日本淡水魚に含めているが、改良メダカを日本産淡水魚に含めるべきかは疑問視されていた。コイであるとかキンギョと同じであるなど述べられていた。近年はメダカ類なども条例で採集が禁止されているところがあるため、この2つについては分けるべきではなかろうか。なおアンケートの中で「好きな淡水魚」のなかで多いのは「オイカワ」「オヤニラミ」だそうですが、アンケートで曖昧な回答をしてしまったことを嘆いておられた。申し訳ない。
●自然環境研究センター 髙久宏祐さん
間違っていたら申し訳ないが、ネットオークションでの魚売買を追いかけていた方。観賞魚の売買についての問題をアップされていた。最近はネットオークションなどの問題で「ヤフオク」が希少生物の取引が禁止か規制されたりしている。今回は主に希少魚(絶滅危惧種)で10年間もデータ取得し分析も行っての発表となった。ただし稀少魚の海水魚も含まれていることに注意したい。またオヤニラミやアカメが多いというが、特にオヤニラミは関東方面でもよく見られるからではないだろうか。一取引あたりで多いのはホンモロコは養殖個体もたくさん食用目的で売られているからかもしれない(ご本人も触れられていたが)。このように注意点も多数あるのだが、概ね有意義なデータを一般に発表されていた。その後は淡水魚放流や過度な採集の問題と法対応の問題となった。
●埼玉県養殖漁業組合 中村陽一さん
株式会社オッケーフィッシュファーム元代表。自己採集と累代飼育盛んなドイツのアクアリウムスタイルにあこがれていたとのこと。それによりみなでおこなう淡水魚保護を推進した。事業化が難しかったもののやがて「養殖をもって乱獲を制す」、「売れる魚をつくる」ことによりV字回復する。同じ系統にこだわるところがすばらしい。「種の保存法の侵略」、過激かと思われるとご本人が述べていたが生き物好きにとってはそういう見解もできるのかと思った。頑張ってほしいです。
●滋賀県立琵琶湖博物館 金尾滋史さん
最後のパネリストで、今回の市民公開講座の主演者。主に琵琶湖博物館の取り組みを紹介。とくにドジョウの繁殖についての取り組みが素晴らしい。
============第二部============
オヤニラミ
パネルディスカッション。お馴染み近畿大学の細谷和海さんのご挨拶でスタート。その後小坪 遊さん(朝日新聞社記者?)のコメントからはじまる。まずは放流についての話で、希少な淡水魚の域外保全を「勝手にやっている人がいる」という頭が痛い問題から始まる。
しかし細谷さんがコメントしていたように、アユの種苗放流という難しい問題もある。髙久さんはニッポンバラタナゴの販売数について「ほかのタナゴと比べ圧倒的に売れている」としていて、タナゴ釣りのために放流しているというのがあるのではないかという指摘も見られる。これでは昔、芦ノ湖に移入されたオオクチバスの問題をほうふつとさせる。
次いで適正な採集について。中島さんの専門であるが、「個体数保全のための種の保存法」であるべきという意見があった。また山口さんは「昔からのトリコをやっている人は根こそぎ獲っていくわけではない」というが、近年は生業ではなく小遣い稼ぎでやっている人が多いのかなとも、という意見もあるが、とくにインターネットの普及でだれでも物を売ったり買ったりできるということはどうしてもそういう問題がついて回るのだな、と感じた。
さらに適正な購入について。淡水魚のトレーサビリティについての意見もあったが、今後の法整備が重要、というがこれは環境省主体でやるべきではないと思う。環境省がやるのは「しばる」ことだけであり、上手くいくはずがないのだ。最後には淡水魚採集・飼育趣味のこれからであったが、やはりこの趣味を続けていく上では放流問題は避けられないと思った。