久しぶりのフィリピン魚となります。今回はフィリピン魚の変わり種をご紹介します。
ロングテールトライポッドフィッシュTripodichthys blochii (Bleeker, 1852)という種類です。一見カワハギの仲間のように見えますが、カワハギとは別科のギマ科の魚です。
●ギマ科の魚
ギマ科の魚は、日本にはギマのみが分布するとされています。カワハギににた体で、サバのような長い尾柄部と、2叉した尾鰭をもちます。さらに粘液を出すようで、釣り人からは気味が悪がられ、リリースの対象となってしまうような魚です。ただし実際は美味な魚といわれており、三河湾では食用として市場にもでております。
ギマ科の魚とカワハギの仲間を見分けるのに重要なのは腹鰭。カワハギやモンガラカワハギの仲間では腹鰭が左右対をなさないのに対しギマ科の魚や、ベニカワムキ科の魚では対をなすという特徴があります。ベニカワムキ科の魚はギマ科の魚とは、尾鰭が2叉しないことや、尾柄部が短いことによって区別可能です。またギマ科の魚は浅い海に多いのに対し、ベニカワムキ科の魚は深海に多く生息しています。
先ほど述べましたようにギマ科の魚は、日本ではギマのみが分布するとされていますが、インド・西太平洋の暖海域には本種を含む4属7種のギマ科魚類が分布しております。Fishbaseによりますとフィリピンには3属3種が分布しています。そのうち1種は日本にも共通の種類が生息します。
本種は吻がやや尖り、尾柄部は長いです。第1背鰭棘間の鰭膜は黄色から淡色であることも特徴です。
●ギマTriacanthus biaculeatus (Bloch, 1786)
ギマは日本にも分布する種類です。吻は短く、突出しません。英名はショートスパインドトライポッドフィッシュといい、この短い吻にちなむようです。胸鰭や尾鰭は黄色という記述があります。本個体では背鰭や臀鰭も黄色になります。吻が短く、ほかのフィリピン産ギマ科魚類と区別できます。ギマ属は2種が知られており、もう1種はオーストラリアやインド洋に生息するそうです。
●ロングスパインドトライポッドフィッシュPseudotriacanthus strigilifer (Cantor, 1849)
この写真からもおわかりのように、第1背鰭の第2棘がやや高いのが特徴的です。体には茶色い縞模様がありますが、水中では金色に輝いて見えるようです。また、体がやや寸詰まりで、吻の形もロングテールトライポッドフィッシュとは若干異なる印象を受けます。1属1種です。私は最初、ロングテールトライポッドフィッシュのことを本種と誤同定していたことがありました。
●おまけ 謎のギマ科魚類
この個体はインドネシアの産ということで、フィリピン産ではないのですが、ユニークな個体です。背鰭第2棘が短く、尾柄部が長く、第1背鰭鰭膜が黒くないなどの様子からおそらくロングテールトライポッドフィッシュではないかとも思われるのですが・・・。インドネシアに産するものの1種であるTripodichthys angustifrons (Hollard, 1854)は、本種にそっくりですが、鰭膜が黒っぽいなどの特徴があるようです。