魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

オニハゲブダイ

2020年05月30日 22時49分41秒 | 魚紹介

今年の5月はコクチバスだけでなく、もう1種新しい魚との出会いがあった。スズキ目・ブダイ科のオニハゲブダイである。

オニハゲブダイはハゲブダイ属の種類である。ナンヨウブダイのようにも見えるが、こぶのようなものは発達せず、尾も伸びていない。また両方の眼の間にわっか状の斑紋があるのも特徴である。紅海のChlorurus gibbusはナンヨウブダイの紅海バージョンという雰囲気ではあるが頭部の形などはオニハゲブダイの紅海バージョンのようにも見える。ちなみにオニハゲブダイは琉球列島からピトケアン諸島に生息しており、インド洋や紅海には見られず、スティープヘッドパロットフィッシュという別の種に置き換わるのだ。頭部はブダイの中でも独特の輪郭をしていて見分けやすいといえるかもしれない。なお、刺身で食したがかなり美味しいものであった。

なお今回オニハゲブダイを食したことにより、我が家で食したのはナンヨウブダイ、オオモンハゲブダイ、シジュウカラ、ハゲブダイにつづき、計5種目となった。日本産は7種いて、あとはオカメブダイ、コブブダイなのだがこの2種は残念ながら日本ではまれな種でなかなか食べられそうにない。

加藤昌一氏のベラ・ブダイ図鑑(ブダイもですよ、ブダイも!)によれば日本では稀な種とある。次はいつ出会えるかわからないような魚なのだ。せっかくなので今回の個体は耳石だけでなく顎骨標本も作製したいところである。もうすでにクリーニングは終わって後は組み立てるだけである。それにしても全長530mm、標準体長420mmもある大型個体だがそれだけに骨もでかい。

なおブダイ科Scalidaeというのは最近の文献では認めていないことも多い。その場合はベラ科のブダイ亜科という扱いになる。Scaridaeではなく、Scarinaeで検索しなければならず面倒くさい。最後になったがこのブダイを突いてきてくれた漁師「櫻井かんた」さんには感謝したい。

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コクチバス

2020年05月14日 13時58分04秒 | 魚紹介

今回は久しぶりに淡水魚の話題でも、最近キバラヨシノボリの新しい論文が出た。ようは「キバラヨシノボリはクロヨシノボリからそれぞれの島で独自に種分化した」というものだ。であればそれぞれの島のキバラヨシノボリは別亜種ではなく、別種ということになる。そうなると別水系からの放流を行うと在来の個体群にダメージを与えてしまうことになる。

それとは全く関係ないが、Youtuber、もといYoutuberとして知られる「荒川水系の釣り人」さんから魚をいただいた。スズキ目・サンフィッシュ科・サンフィッシュ属のコクチバスである。コクチバスはアメリカ原産の淡水魚で、もちろん日本における分布は移入であり、あちこちの国に移植され世界中で問題となっている。

そもそも私はバス釣りをしないので「口のサイズ」がどうとかいうのがわからないが、やはり上顎長が長いのがコクチバスの特徴らしい。ただ模様からオオクチバスと明らかに違うのはよくわかる。なお名称はどちらも英語名からきているようだ。コクチバスはアメリカではSmallmouth bassというし、オオクチバスはLargemouth black bassという。日本では北海道~山梨県までの19都道県に移入されたというが、山梨県では根絶されたようだ。しかしせっかく根絶してもまた出てきてしまっているとも聞く。特定外来生物なので移植は禁止のはずなのだが。コクチバスは流れる河川を好むらしく、オオクチバスにより危機に瀕している魚とはまた別の魚が絶滅の危機に瀕することになるだろう。

今回の個体は腹がぱんぱんで多数の卵が入っていた。本種はどうかわからないが、オオクチバスやブルーギルは親魚が産み付けられた卵を保護する習性がある。そのため卵をうみっぱなしにする魚よりは生存率が高くなる。これが成長すると、と考えると恐ろしいものである。

キバラヨシノボリもそうなのであるが、放流というのは常にリスクがつきまとう。このコクチバスの件に関してはアングラーのせいなのだが、実際にアユやサケマスの移植事業でもほかの地域の淡水魚が混ざっていたということはよくあることなのだ。実際に関東で見られるコイ科の一部は湖産アユに混ざって放流されたものが定着した、なんて話はよく聞く。

日本人はもうちょっと放流についてデリケートになるべきだしトキやアユモドキなど、絶滅した地域への再導入についてもデリケートにならなければいけない。漁協もサケマスの放流、とくにアマゴの生息していない地域へのアマゴ放流などの話も聞くが、こういうことでも問題が起こっているはずだが、残念ながらだれも気が付いていない。

なお、サンフィッシュ科をFishbaseで検索するのを悩んだことがある方もいるのではないだろうか。サンフィッシュ科の学名は「Centrachidae」というのだが、この元になったと思われるCentrachus macropterusなんて正直ロクに知らないのだ。「サンフィッシュ科」ではなくケントラクス科とかそんな名前にしたほうが検索するときにわかりやすかったかもしれない。HN「荒川水系の釣り人」さん、ありがとうございました。

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モロ

2020年05月08日 18時20分21秒 | 魚紹介

これまでも「魚のぶろぐ」ではアジ科ムロアジ属の魚を何度もご紹介してきたが、今回は久しぶりに新しいムロアジ属を食する機会に恵まれたのでご紹介したい。モロという種類である。

モロは冨山一郎・阿部宗明の「原色動物大図鑑Ⅱ」(北隆館、昭和33年)では「もっともふつうに見られる種」としているが、個人的には本当にそうなのかなー、とも思う。Googleの画像検索ではこのモロはなかなかお目に罹れず、同じムロアジ属のマルアジのほうがずっと多くヒットする。もちろん海も62年間で変わってきているということがあるのかもしれない。ただ温暖化がすすんでいるという昨今、マルアジよりも南の海に多いモロが少ないというのは疑問。62年前とはアジの学名も今とはかなり異なっているが、あまり分類がすすんでいなかったのかもしれない。

なお、私がモロを見たのは今回が初めてではなく、およそ10年ぶりくらいである。以前に沖合底曳網漁業で獲れたのをいただいたのだが、今回のものは何の漁法で獲れたのかはわからなかった。以前獲れたモロは30cmを超えるビッグサイズだったと思う。当時は定置網にかかったムロアジやクサヤモロをよく見ていたので、ひとめで別の種のムロアジ属だとわかったのだ。厳密に見分けたいのであれば頭部背面をみるのがよいだろう。頭部背面の鱗域が眼の間隔に達しないのが特徴で、インドマルアジをのぞく多くのムロアジ属魚類と見分けられる。インドマルアジとは側線直走部の稜鱗の分布により見分けることができる。インドマルアジは稜鱗が側線直走部の大部分を覆っているのに対しモロは後方にのみある。

「原色動物大図鑑Ⅱ」では刺身にはしないとあったが、刺身にして食べると非常に美味であった。ただし、今回の個体はそれほど大きくはなかったため、4匹分まとめてお刺身にしたのである。その結果それなりの量を刺身で食べることができた。6匹やってきたのだが、あとの2匹は焼いて食した。価格は安価ではあるが刺身は全く安っぽくはない。いい魚を味わうことができた、と思っている。石田拓治さん、印束商店さん、いつもありがとうございます。

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