今年の5月はコクチバスだけでなく、もう1種新しい魚との出会いがあった。スズキ目・ブダイ科のオニハゲブダイである。
オニハゲブダイはハゲブダイ属の種類である。ナンヨウブダイのようにも見えるが、こぶのようなものは発達せず、尾も伸びていない。また両方の眼の間にわっか状の斑紋があるのも特徴である。紅海のChlorurus gibbusはナンヨウブダイの紅海バージョンという雰囲気ではあるが頭部の形などはオニハゲブダイの紅海バージョンのようにも見える。ちなみにオニハゲブダイは琉球列島からピトケアン諸島に生息しており、インド洋や紅海には見られず、スティープヘッドパロットフィッシュという別の種に置き換わるのだ。頭部はブダイの中でも独特の輪郭をしていて見分けやすいといえるかもしれない。なお、刺身で食したがかなり美味しいものであった。
なお今回オニハゲブダイを食したことにより、我が家で食したのはナンヨウブダイ、オオモンハゲブダイ、シジュウカラ、ハゲブダイにつづき、計5種目となった。日本産は7種いて、あとはオカメブダイ、コブブダイなのだがこの2種は残念ながら日本ではまれな種でなかなか食べられそうにない。
加藤昌一氏のベラ・ブダイ図鑑(ブダイもですよ、ブダイも!)によれば日本では稀な種とある。次はいつ出会えるかわからないような魚なのだ。せっかくなので今回の個体は耳石だけでなく顎骨標本も作製したいところである。もうすでにクリーニングは終わって後は組み立てるだけである。それにしても全長530mm、標準体長420mmもある大型個体だがそれだけに骨もでかい。
なおブダイ科Scalidaeというのは最近の文献では認めていないことも多い。その場合はベラ科のブダイ亜科という扱いになる。Scaridaeではなく、Scarinaeで検索しなければならず面倒くさい。最後になったがこのブダイを突いてきてくれた漁師「櫻井かんた」さんには感謝したい。