インターネット上での魚図鑑や、魚を紹介しているサイトではいくつかの傾向が見られます。そしてその傾向により、そのサイトが信頼していいのか、そうでないのかを(ある程度)判断することができます。今回は信用できる魚サイトか、信用できない低品質なサイトか、見分けるための傾向をご紹介します。
信用できる魚サイトとは
猛毒を持つ魚もいるが恐怖をあおってはいけない
「信用できる魚サイト」というのは、はじめから信用できる魚サイトにはなりません。解説してある程度時間がたち、多くの人に見てもらう中で「信用」というのがついてくるのです。しかし、残念ながら開設されて時間がたっても信用されない魚サイトが多く、逆に解説されて時間がたっていないサイトで信頼を得ている魚サイトはまずありません。これは近年、とくに2010年代後半以降できたサイトではWordpressをベースとした「誰でも作れる低品質」魚サイトが乱立しているということにあります。
では、どのような魚サイトが信頼性を得ているのか、実際に魚の名前でGoogle検索を行うと、ほとんどの魚種でいくつかのサイトのみが上位にヒットします。具体的に言えば「市場魚介類図鑑」「WEB魚図鑑」「魚類写真資料データベース」、そしてあまり信頼はおけないが便利で使用している人も多い「Wikipedia」の4つです。これらのサイトはどれも20年以上運営されており、その分大きな信頼を得ているともいえます。実際に信頼性がなければこれほど長いことサイトは運営できません。
一方近年生まれたサイトも多少は出てきますが、それは「飼育」やら「釣り」など特定のワードを組み合わせた場合のみヒットされています。しかしこのようなサイトは検索からの流入者数を増やすために「猛毒」など「大げさなワード」を出したり、飼育したこともないのに生物飼育情報を出すなども多く、信用できるものではありません。そしてこれらのサイトの多くが開設して1~3年ほどで更新を終了してしまっています。
サイト作成の動機
獲れた魚の名前を知りたい人も多いはず
信用できる魚サイトはどのような目的で作成されているのでしょうか。色々ありますが、多くの場合「知」の情報提供があげられます。これは、ヒトに潜在している「知」の欲求、知的好奇心を満たしてもらうためです。たとえば、釣りやダイビングで見た魚の名前が知りたい。きれいで感動した。いつみられるのか、友達とこの感動を分かち合いたい、というものです。上記の「市場魚介類図鑑」や「WEB魚図鑑」では詳細な解説もあり、これを満たすことができるはずです。一方、低品質サイトでは断片的な情報やWikipediaにあげられた不正確な情報がメインとなっているので、なかなか知的好奇心を満たすことはできません。
この「魚のぶろぐ」ではいつもこのような低品質魚サイトを問題視してきましたが、彼らにとっては「誹謗中傷」とされているようです。ですがこれほど誹謗中傷されてきたのにいまだに続けられている理由は簡単で、低品質サイトの運営者にとってはこれが資金稼ぎになっているのです。魚のコンテンツでこんなことはやってほしくはないのですが、彼らがやってきている「トレンド追っかけサイト」などはもうすでにレッドオーシャンになっていて、ほかの記事、例えば車だの、ホビーだのさまざまなジャンルでもレッドオーシャンとなりつつあり、まだまだライバルが少ないこのジャンルに進出してきているのだと思われます。
広告を貼り付けて非常に簡単な資金稼ぎとなっていますが、このようなサイトは半永久的に残すべきとは正直思えません。実際低品質サイトの運営者も同様に思っている人が多く,ある程度運営に行き詰まったと判断すると、サイトを売却してしまうのです。全く更新されていないサイトは、おそらくサイトの更新をあきらめてやめてしまったからだと思われます。
文章コンテンツの出典
魚の記事を書くなら魚類検索は参考にしたい
信用できる魚サイトの文章コンテンツは主に書籍や論文からきています。しかし、それだけなら低品質サイトの運営者にも同じことができます。もっとも、低品質サイトの運営者は、魚の解説をかくために必要な書籍を購入したり、文献を入手したりするなんていうことはほとんどないのですが。
ですが信用できる魚サイトを作り、文章コンテンツを出している人たちは大体が魚のことが好きな人たちなので、実際に魚に触れ合ったという方が多いはずです。そのため文章コンテンツにおいても、概ねその触れ合いの中の経験というものが生かされてきています。一方低品質サイトの運営者は魚にあまり触れあったことがないという人も多く、サイトに掲載されている文章はほとんどが同じように書いている低品質サイト、もしくはWikipediaなどのもので、その分品質や信憑性はどうしても低くなってしまうのです。
画像コンテンツの出典
画像の無断使用問題は何らかの対策が急がれる
画像コンテンツも、信用できるサイト、信用できないサイトともに非常に多くあります。信用できるサイトは基本的にバナーなど一部の素材をのぞいて、サイトの運営者が用意します。画像を自ら用意するので、著作権法なども特に怖いことはありません。中には「魚類写真資料データベース」や「WEB魚図鑑」のように、他者からの画像やデータをお借りして図鑑をつくるというサイトも存在します。この場合、第三者の写真が使用されていないかどうか、注意する必要があるといえますが、これは例外的なものといえます。逆に低品質サイトや、しょうもないYoutubeチャンネルなどから狙われる可能性があることには気を付ける必要があります。
一方信用できない低品質サイトの画像はどこからきているのでしょうか。まず低品質サイトを象徴する外国人の写真素材など、フリー素材のサイトから借りてくるというケースが多いです。近年はほかにも写真素材を販売するサイトなどもありますが、フリー素材ではないものもあり、著作権に関する引用表示の必要性なども含めて使用には注意が必要です。さらにフリー素材は数も少なく、いくつかの全く同じ写真や画像が複数のサイトで見られるなんていうこともあります。
さらにひどいものになると、いくつかのサイトでは別のサイトからの写真を勝手に使っているなんていうケースもあります。特に「市場魚介類図鑑」などから引っ張ってきているものが多いです。こういう無断使用の画像は使用料を徴収するのが一番ではありますが、弁護士への相談など、使用料の徴収よりも高くつくケースが多く難しいこともあります。
記事を書く・出すタイミング
深場の魚は低水温で飼育したい
記事を書くタイミングも、信用できるサイトとそうではないサイトでは大きく異なります。信用できるサイトでは特に外部に左右されずに記事が出てきますが、信用できない低品質サイトでは、何か動きがあったらすぐに出てきます。「動き」というのは「テレビで紹介された」とか「ネットニュースで話題になった」などです。このような動きがあると、競い合うように記事が出てきます。もっとも出てくる記事は見るに堪えないレベルであり、あるイトヒキベラが新種記載されたときなど、いち早く飼育情報を作成した生物サイトがありますが、飼育されたことがないはずなのに飼育情報が掲載されていてお笑いものです。水深50mの深さの魚など28℃で飼育したらやばいとおもうのですが。このような早さを重視し信頼性は軽視というのは英国のある島の鉄道とか、以前よく見られたトレンドブログに通ずるものがあります。
最後に
信用できるサイトも、信頼できないサイトであっても、それは「結果」でしかない。本当は(動機がどうであれ)信用できていない魚サイトであっても、本当は信用できるサイトを作りたかったのかもしれない。しかし結果的には信用できないサイトになってしまったというケースが散見される。では、信用できない魚サイトになってしまった原因というのは何か。
答えのうち二つは「資金不足」と「経験不足」である。お金をかけないで良質なサイトをつくることはできないし、いいサイトをつくるのであれば情報源の入手が重要になってくる。一方「経験不足」というのは「文章コンテンツの出典」にも書いたとおりで、実際に「魚を探す」「魚を採集する」「魚を食べる」「魚を飼う」「魚を実際に同定してみる」など、一連の行動の経験がないと、どうしても本をだらだら模写しているだけになってしまいがちである。では、どうすればよい魚サイトをつくることができるのか。これはまたいつか考えてみたい。