優は次の日も「時の博物館」に立ち寄った。最初に石を元の場所に返した。そして、椅子に腰掛けた。思った通り、座り心地のよい椅子だった。
表が騒がしい。イローナはカーテンを少し開けた。
「森に入った子供が帰ってこない」女の声が聞こえる。
「悪さをすると城から悪魔がやってくるよ。さらわれて、殺されるよ」
老婆の声がする。
「私の子供を探して、お願い」
母親の声がする。イローナが外へ出ようと戸口に向かうと、父がイローナを止めた。吝嗇な小男は小さいが鋭い声で言った。
「関わり合うな。お前の仕事は終わっていない。皿洗い、夜の水くみ」
母親の違う姉二人は意地の悪い目をイローナに向けている。
「あの子が歌手だって」
「いい気なもんね」
「仕事は半人前なのに」
「役立たずが、悪魔にさらわれてしまいな」
継母が吐き捨てた。馬車の音が聞こえてきた。村人たちが我先に家へ逃げる。馬車は森へ向かって行く。鞭の音と車輪の音。馬車の音が消えると、後に闇夜のような沈黙が残った。
優は少し眠った。石の向こうに部屋があるようだ。時々人の気配がする。優は帰り際に、また、石を一つ盗んだ。
表が騒がしい。イローナはカーテンを少し開けた。
「森に入った子供が帰ってこない」女の声が聞こえる。
「悪さをすると城から悪魔がやってくるよ。さらわれて、殺されるよ」
老婆の声がする。
「私の子供を探して、お願い」
母親の声がする。イローナが外へ出ようと戸口に向かうと、父がイローナを止めた。吝嗇な小男は小さいが鋭い声で言った。
「関わり合うな。お前の仕事は終わっていない。皿洗い、夜の水くみ」
母親の違う姉二人は意地の悪い目をイローナに向けている。
「あの子が歌手だって」
「いい気なもんね」
「仕事は半人前なのに」
「役立たずが、悪魔にさらわれてしまいな」
継母が吐き捨てた。馬車の音が聞こえてきた。村人たちが我先に家へ逃げる。馬車は森へ向かって行く。鞭の音と車輪の音。馬車の音が消えると、後に闇夜のような沈黙が残った。
優は少し眠った。石の向こうに部屋があるようだ。時々人の気配がする。優は帰り際に、また、石を一つ盗んだ。