創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

物語のかけら⑮

2006-07-30 10:32:08 | 創作日記
夏の日差しがカーテンに溢れていたが部屋は意外に涼しかった。天井の巨大なプロペラがゆっくりと回っていた。窓を開け、床に掃除機をかけ、窓際を拭いた。一通り掃除が終わると、優は窓の外を眺めた。空に屹立するビル。マンション。狭い公園にわずかな緑。信号にせき止められる人。道行く人々。自転車。激しく鳴く蝉の声。こんな世界に自分はいるのだ。独りぼっちで。
また、歌声が聞こえた。優は、ゆっくりと窓を閉めた。静寂が戻ってきた。同時に歌声は消えた。優は肖像画の前に立った。イローナの頬、二の腕に、うっすらと汗がにじんでいた。突然、意識が遠のいた。
優は本の中に立っていた。前も後ろも書棚だった。古い本が整然と並んでいた。これは夢なのだ。抜け出すんだ。また、夢の中に閉じこめられた。

「父と暮せば」

2006-07-30 06:40:37 | 映画・舞台
強い感銘を受けた。映画作りの頂点がある。破綻は全くない。至芸はテーマを見事に浮かび上がらせた。「核の抑止力」を根拠にして「核の保有」を正当化する人々。「憲法の改定」を叫ぶ人々。そして「被爆国日本」を知らない外国の人々。それらの人々に是非見てもらいたい。原爆がもたらした庶民の葛藤、踏みにじったもの。そして再生する愛。