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君は僕のことなど何も覚えていない。
でも、いつも君は僕の心の中に住んでいる。
不公平だなあ。
君は僕の母になり、恋人になり、姉になり、妹にもなり、妻にもなった。
そう、全ての女性になった。
朝礼で君の名が呼ばれ、君はいつもの眩しそうな目をして、生徒の間を通り抜け、校長から表彰された。
細い小さな少女。
それが君だった。
「朝鮮人やて」
噂は僕の耳にも入った。
結局一度も話したことはない。
離れて見ていた。
あの時話しかけたら、世界は変わっただろうか。
何も変わらなかったと思う。
変わらないで欲しいから僕は話しかけたりなんかしなかった。
君は他の少女といても、目立たなかった。
控え目で、静かに微笑みを浮かべていた。
君も七十才になっただろう。
生きていないかも知れない。
でも、いつも君は僕の心の中に住んでいる。
僕が死ねば、誰かが君のことを語り始めるだろう。
ひとり死んだらひとり語部が現れる。
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