標題の映画を観た。
映画ライターの久保玲子さんがパンフレットに書いておられる通り、冒頭からまずは驚かされ、唸らされる。「えっ、まさかこれがメリル・ストリープ?」と。ファーストシーンでの一挙手一投足が、まさに老いても一家言あり、という英国老婦人そのものに見える。演技もさることながらメイクの妙技に圧倒される。
言わずと知れた英国初の女性首相として10年にわたって君臨した“鉄の女”マーガレット・サッチャーの生涯のうち、後半40年をメリル・ストリープが演じている。保守党党首選挙に出馬して当選したのが50歳、今の私と同い年だ。そのパワーたるや凄い。その後54歳から65歳で辞任するまで、フォークランド紛争や爆弾テロとの遭遇等が描かれてはいるが、政治映画ではないということは監督も認めている。実は何よりもパートナーや家族、夫婦のラブ・ストーリーであり、人はひとりで生まれて、ひとりで死んでいくということを受け入れる壮大な人生の物語、だというのだ。
あのサッチャー首相が、数年前から認知症を患っているということが、実の娘さんから公表されたときにはとても驚いた。
家に帰れば、母であり、妻であった彼女。家庭より社会貢献をとってしまう自分を肯定しつつも、同時に罪の意識を感じているようにも見える人間らしさ。仕事をする人間が直面する犠牲と後悔という、現代人の多くが抱えるジレンマ・・・。 “鉄の女”なんているわけないのだ、と思う。愛する双子が泣いて追いかける中、アクセルを踏んで国会議事堂に出かけていく母の姿は、レベルは違ってもワーキング・マザーなら誰しも経験済みだ。同性ならではの眼差し、共感が映画を貫いていることは脚本家・監督がともに女性ということからくるのだろう。
本編中、彼女の頭の中と同様、現実と過去が交錯する。癌で他界したはずのパートナーのデニスが、彼女の幻想の中に終始存在している。だが、彼女の頭の中の混乱や違和感が映画自体を分かりにくくしていることはなかった。彼の遺品を整理する決心がつくまでに8年かかっている。最愛の夫であり最強の助言者であった人の死を受け容れるまでの時間、ということか。
ブルーと赤の衣装の色のチェンジにも目を見張った。若い頃、青い服に身を包んでいるマーガレット、その服の青が次第に深く濃くなり、党首となるとロイヤルブルーに近くなっていく。政党のオフィシャル・カラーである。保守党が青、労働党が赤。そして党首を追われる日、赤いバラを踏みしめながら赤いスーツを着る。そのコントラストが鮮やかに記憶に残った。
今日は天気予報通り日中とても暖かくなった。この調子で暖かい日が続けば、あっという間に桜の開花は進むだろう。ガイダンス等が始まり、学内には久しぶりに沢山の学生たちで溢れている。
新しい年度、希望と活気が感じられる。文字通り始まりの季節である。
映画ライターの久保玲子さんがパンフレットに書いておられる通り、冒頭からまずは驚かされ、唸らされる。「えっ、まさかこれがメリル・ストリープ?」と。ファーストシーンでの一挙手一投足が、まさに老いても一家言あり、という英国老婦人そのものに見える。演技もさることながらメイクの妙技に圧倒される。
言わずと知れた英国初の女性首相として10年にわたって君臨した“鉄の女”マーガレット・サッチャーの生涯のうち、後半40年をメリル・ストリープが演じている。保守党党首選挙に出馬して当選したのが50歳、今の私と同い年だ。そのパワーたるや凄い。その後54歳から65歳で辞任するまで、フォークランド紛争や爆弾テロとの遭遇等が描かれてはいるが、政治映画ではないということは監督も認めている。実は何よりもパートナーや家族、夫婦のラブ・ストーリーであり、人はひとりで生まれて、ひとりで死んでいくということを受け入れる壮大な人生の物語、だというのだ。
あのサッチャー首相が、数年前から認知症を患っているということが、実の娘さんから公表されたときにはとても驚いた。
家に帰れば、母であり、妻であった彼女。家庭より社会貢献をとってしまう自分を肯定しつつも、同時に罪の意識を感じているようにも見える人間らしさ。仕事をする人間が直面する犠牲と後悔という、現代人の多くが抱えるジレンマ・・・。 “鉄の女”なんているわけないのだ、と思う。愛する双子が泣いて追いかける中、アクセルを踏んで国会議事堂に出かけていく母の姿は、レベルは違ってもワーキング・マザーなら誰しも経験済みだ。同性ならではの眼差し、共感が映画を貫いていることは脚本家・監督がともに女性ということからくるのだろう。
本編中、彼女の頭の中と同様、現実と過去が交錯する。癌で他界したはずのパートナーのデニスが、彼女の幻想の中に終始存在している。だが、彼女の頭の中の混乱や違和感が映画自体を分かりにくくしていることはなかった。彼の遺品を整理する決心がつくまでに8年かかっている。最愛の夫であり最強の助言者であった人の死を受け容れるまでの時間、ということか。
ブルーと赤の衣装の色のチェンジにも目を見張った。若い頃、青い服に身を包んでいるマーガレット、その服の青が次第に深く濃くなり、党首となるとロイヤルブルーに近くなっていく。政党のオフィシャル・カラーである。保守党が青、労働党が赤。そして党首を追われる日、赤いバラを踏みしめながら赤いスーツを着る。そのコントラストが鮮やかに記憶に残った。
今日は天気予報通り日中とても暖かくなった。この調子で暖かい日が続けば、あっという間に桜の開花は進むだろう。ガイダンス等が始まり、学内には久しぶりに沢山の学生たちで溢れている。
新しい年度、希望と活気が感じられる。文字通り始まりの季節である。