ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2012.6.2 フラワー・パレスで蛍の夕べ

2012-06-02 21:53:38 | 
 また遊びに出かけたのかと笑われそうだが、鬼(修学旅行中の息子!)のいぬ間の大人二人の休日。ちょっと贅沢な温泉一泊旅行を計画した。当初は、治療後の週末なので無理せず、ただひたすらホテルでのんびりまったりする予定だったが、急遽抗がん剤中止となったので、これは大丈夫かも・・・とフリーパスを追加購入して、仕事に出かけるのと同じ時間に家を出た。
 お天気は終日はっきりしなかったが、なんとか雨に降られることはなく、我が家としてはかなり精力的な1日を堪能した。

 ロマンスカーと登山鉄道を乗り継ぎ、ホテルに荷物を預けて身軽に散策開始。まだ紫陽花は咲き始めたばかりだったが、蕾は沢山ついていた。雨の後でどの木々も緑がとても濃く、目の疲れがとれる感じだ。
 いつだったか、このホテルの創業者のお孫さんが書いた、クラシックホテルを題材にした文庫本を読み、昨夏に夫と2人でその系列のホテルに宿泊したのだが、今回もその乗りだ。こうしたクラシックホテルの制覇まで残すところ関西の1箇所のみ。何分コンプリートが好きな私たち、こうなったら近いうちにぜひ行こうね、と約束している。
 館内の資料展示室を覗きながら、文庫本に書いてあったことをリアルに思い出す。そして再びケーブルカー、ロープウェーと乗り継いで海賊船が浮かぶ湖畔でランチタイム。

 何と言っても、私たちにとってここはアクセスの良い一番身近な温泉地だ。4年前の抗がん剤治療中、全くどこにも行けなかったから、と気分転換のために1泊したことがある。あの時は当然ながら体調は最悪で、ただひたすらホテルに籠って過ごした。それ以来の来訪だが、こうしてフリーパスを駆使して遊覧船にまで乗るのは12年ぶりのことだ。
 その時は、今は施設に入っている義母と保育園児だった息子と4人で、湖畔のホテルに1泊した。その時を思い出して、息子がお風呂の中でスイッチバックと称して行ったり来たり歩き回ったことや、ロープウェーを何やらえらく怖がった等という話になる。今回はスウェーデン船がモチーフになっているバーサ号に乗船。これまた20年近く前の研修の時に、本家ヴァーサ号の船内を見学したことを思い出す。

 4年前に訪れた際に買った寄木細工のストラップを夫が失くしてしまったので、それに代わるものをお揃いで買い、バスでホテルまで戻った。
 宿泊しているホテルの部屋には数字の号室のほかに、一部屋一部屋全て異なった花の名前が付けられている。私たちの部屋は「熊谷草」。お隣は「立葵」、お向かいは「撫子」だ。熊谷草は知らなかったが、唇弁は袋型で、花を一つ横向きに付けて美しさを現す姿から、花言葉は「気まぐれな美人」だそうだ。部屋のカーペットにもお風呂場のタイルにもそのお花があしらわれている。もちろんキードロップにはこのお花が。記念にホテルショップで同じストラップを購入した。

 メインダイニングでフレンチディナーに舌鼓を打った後は、中庭を散策。「蛍が飛び始めました」というご案内を受けていたので、懐中電灯を借りて歩いてみた。これまでオーストラリアで土蛍を見たことはあるが、こんなに沢山の蛍が飛ぶところを見たのは初めて。何と幻想的なことか。慣れているというのも変な表現なのだが、手を差し出すと止まってくれたりして、健気に光る小さな命に不思議な力を感じ、興奮してしまった。

 半世紀生きてきてもなお初めての経験をすることが出来るということは、なんと素晴らしいことか。そしてこうして元気に歩き回ることが出来て本当に感謝だ。
 治療が辛い等と弱音を吐いている場合ではない。まだまだ死ねない!たとえ髪の毛がなくなっても、足の痺れが酷くても、爪がとれても頑張ってしぶとく治療を続けて、また楽しまなければ、と思う。

コメント
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