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『忘れられた花園』

2013-09-10 11:02:17 | 本・映画・音楽の感想

オーストラリアのブリスベンで祖母ネルと暮らしていたカサンドラが
亡くなった祖母からイギリスのコーンウォールにあるコテージを
相続したところから物語は動き出す。カサンドラの現在である2005年、
ネルがイギリスを訪れてコテージを買った1975年、そして
このコテージを含むブラックハースト荘である一族が暮らしていた
19世紀末から20世紀初頭という、三つの時代の物語が交互につづられる。

途中までしか解き明かせなかった祖母ネルの出自を、孫であるカサンドラが
祖母のノートを手がかりに引き継ぐというのが一言でまとめた場合の
ストーリーではあるが、百年という時の流れに埋もれた家族の歴史を
明るみに出していくプロセスはわくわくするようなミステリーだ。

小説のところどころに、登場人物のひとりが書いたおとぎ話が
はさみこまれているのだが、これもまた謎解きと無関係ではない。
そうして、大きなパズルのピースがひとつずつはめこまれていき、
最後に完成した全体を見ることができるのは読者だけだ。
時の流れのなかで失われてカサンドラにも手に入れられなかった
ピースがあるからだ。それが歴史というものの性質だろう。

これは夫と息子をなくしたカサンドラの再生の物語でもある。
そして、大きな秘密を内に秘めた花園が物語のかなめとなる点で
「秘密の花園」をどうしても連想してしまうが、「秘密の花園」に
わくわくした経験があるなら、この小説もきっと楽しめることうけあいだ。
しかも、「忘れられた花園」ではビクトリア朝時代のイギリスが、
太陽にあふれた現代のオーストラリアとの対比で楽しめるのだから。
ちなみに、作者のケイト・モートンはオーストラリア人だ。


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