下町月島の夕暮れ時、NHKの朝ドラの舞台近くでの会合の帰り、一杯やりましょうということに。昔は近所のおばさん連中で溢れかえった下町商店街の面影はすっかり無く、陰も形も無かった「もんじゃ屋」のストリートに様変わり。お陰で路地の奥まで居酒屋は駆逐され、月島で気の利いた飲み屋を探すのは至難の業。そんな街でも若もんが住んでみたい街のひとつだそうだ。
昔の都電通りと「もんじゃストリート」を横切り、ついた店は月島一丁目の「肴や 味泉」。飛び込みで店に入るが開店直前。女将さんからは「テーブルは予約で一杯ですがカウンターでよかったら?」と言われ、むしろ有難い。30人も入れば一杯の店、予約のお客さんは六時頃からだそうだ。
カウンターの隅に着くなり生ビールを注文。店のお姉さんから肴の注文は早くしたほうがいいとのアドバイスを受ける。早速、「そら豆」、「刺身のおまかせ」、「冷奴」、店のお勧めと言われ「さつま揚げ」と「煮穴子」を一挙に注文。生ビールを飲みながらカウンターの上にずらり並んだ日本酒の銘柄札と一升瓶を眺めるにつれ、ここの店主のこだわりが伝わってくる。
「義侠」、「飛良喜」、「強力」、「豊盃」などの大吟醸クラスの酒に混じって、燗酒の王者「大七 生もと」、「神亀」など通好みもしっかり容易してある。銘柄札を見て思わず嬉しくなってしまう。ビールの後、まずは中々手に入らない「義侠」を頼む。
次は当然に燗酒。適温の「大七 生もと」が「錫のチロリ」で運ばれてきた。なんと手作りの雰囲気。ずっしりと重く錫の鈍い光沢。主人に聞くとやはり月島の工房で錫100%の手作り作品だそうだ。ずっしり重い錫の一合徳利で毎日2合の親父の晩酌を思い出す。
いい燗どころの酒に生きのいい刺身、ふっくら柔らかい「煮穴子」と手作りの「薩摩揚げ」は評判だけのことはある。店も満席、周りも盛り上がり賑やかになってきた。2時間半ばかり、主人の心意気も伝わりも気持ち良く飲ませて貰いました。帰りに工房のありかを教わり、帰り道に確認する。飲ん兵としては燗付け器に合わせて、是非に手に入れたい品だ。