散日拾遺

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スプリングスティーン / 日本の空が二人分低くなった10月20日

2016-10-25 07:03:14 | 日記

2016年10月25日(火)

 「6歳のとき、宗教の授業で聖書を読んだことで自分の言葉を身につけた。聖書は謎めいた詩で、深い悲しみと至福がある。教育の影響から、歌詞を書くときに宗教的な言葉が霊的な力とともにたくさん入ってくる。救済、贖い、天罰……。これらの言葉は自分にとって自然な言葉なんだ。子供の頃からかかわっているから、天国も地獄も悪魔も抽象的なものじゃない」

 さて、誰でしょう?

 

 スプリングスティーン、24日(月)朝日の文化・文芸面に大きく紹介された。

 「ロシア文学もよく読む。ドストエフスキーの『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』。心理的に深いものがあればどんな本でも好きだね」

 ドストエフスキーは心理的に少々「深すぎる」感じがなくもないが、スプリングスティーンにとっては親しいものだったかもしれない。それというのも・・・

 「(父親は)ほとんど仕事もせずに飲んだくれていたが、自分の人生を形づくる上で欠かせない存在。おやじの作業着を着てステージに上がり、おやじにかかわるものでステージを作る。愛情を得られない人をまねることで、その人に近づけるといわれるけど、自分にとって、おやじはまさにそんな存在だった。」

 このコメントが、聖書ともドストエフスキーとも二重三重に重なってくる。『ドストエフスキーと父親殺し』(フロイト)を久々に読んでみたくなった。もっとも、光文社古典新訳文庫のNG氏訳は、原著と突き合わせたらしい一読者から辛辣きわまる評価をもらっており、「辞書を引き引き」氏の指摘が事実だとすればあまり信用するわけにはいかない。どの訳がいいのかな、ともかく今は急いで読みたい。

***

 10月20日(木)、田部井淳子と平尾誠二が他界した。何という一日だろう。僕は新日鉄釜石の大ファンで、その七連覇最後の年に学生ラグビー史上最強の同志社を率いて果敢に挑戦しあと一歩まで追い詰め、卒業後は神戸製鋼に進んで第二の七連覇を果たした平尾が、いわば姿を変えた釜石魂のように感じられた。深紅のユニフォームが釜石から神鋼に引き継がれたのは、武田/真田の赤具足が彦根の井伊に伝わったことを彷彿させる。そして田部井さん!どうにも容赦のないものだ。

  

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