散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
コメント歓迎、ただし仕事関連のお問い合わせには対応していません。

自己の状況認知に対する即時的かつ持続的な効果

2016-10-30 12:30:12 | 日記

2016年10月30日(日)

 先ほどからアクビを連発している。これまでならば「眠いのかな、たるんでるな」と苦笑で片づけるところ、「脳が覚醒度をあげようと努力しているのだ」と思ってみればいくらか慰むところがあり、さらに「升田幸三の鬼手や虚子の名句が生まれるかもしれない」と考えると動機水準には案外バカにならない影響がある。

 その代わり、アクビが出たからといってあっさり午睡に逃げるわけにはいかない、のね。昨日は帰る早々、竹をたんと伐った。早く片づけて続きをやりたい。この季節の庭仕事は最高に気もちいい。ほどよく疲れるのでアクビもよく出る。しかし眠いのではない、らしい。

   

Ω

 


「棄権」ならぬ「反対」 / How to speak dog

2016-10-30 08:16:57 | 日記

2016年10月30日(日)

 被爆二世様、コメントありがとうございます。お返事する前に一言、28日に伝えられた下記のニュースをどのようにお聞きになったでしょうか。

 「核兵器禁止条約決議案が国連第一委員会で賛成多数で採択/日本は反対」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161028/k10010747411000.html

 今回の反対は「核保有国と非保有国との間の対立を深めない」ための戦略的判断であると軍縮大使が語ったとのこと、1994年以来23年連続でわが国主導のもとに採択されてきた「核廃絶決議」こそ真に目ざすところであると政府は説明します。それを素直に信じられたらどんなによいかと思います。私どもはさておき、世界はこれを信じるでしょうか?

 微妙な問題を含んでいることでもあり、多弁は控えることに致しましょう。決してお返事を強いるものでもなく、ただ例によって、ニュースを知った直後に被爆二世さんからコメントをいただくという「偶然」が看過しがたくて、ここに書きとめる次第です。27日にはまた、戦争の現実に触れて徹底した平和主義者となった若杉参謀こと三笠宮崇仁親王が他界されました。これらを互いに無関係な別々のできごととして書き並べるのは、この世に生活する生身の人間には無理というものです。

***

 さて「あくび」の話でした。興味深い情報提供ありがとうございます。時実利彦先生がそんなことをおっしゃっていたのですね、脳の自己覚醒の方図ですか。そういえば自分自身もパフォーマンスを控えて緊張した時 ~ 中学校のマラソン大会の号砲直前とか ~ に、生あくびが出たことを思い出します。郷土の先人・高浜虚子がこれを活用していたとは知りませんでした。医事新報が出所のようですが、巻・号などおわかりでしたら教えてください。

 実はここにも面白い暗合があります。少し前のブログで、博士課程入試に使われた面白い英文のことを書きましたね。その後この本を注文し、数日前に届きました。"How to Speak Dog: Mastering the Art of Dog-Human Communication" というタイトルで、『イヌ語をしゃべるには』とでもいうところでしょうか。この中に3頁ほどにわたって、イヌのあくびについて触れたところがあり、なかなか面白いのです。そしてポイントの一つは「(イヌの場合)アクビは決して疲労や退屈の表現ではない」ということなのですよ!

 では何の表現か、そのうちヒツマブシ・・・ではないヒマつぶしに当該箇所を訳してみようと思うので、楽しみにお待ちください。ちなみに、高3の秋を迎えて忙しい三男にヒマな父親が出した課題は下記のようなものでした。

 Stanley Coren の "How to Speak Dog" を読んで以下の問いに答えなさい。

問1: イヌのアクビとヒトのアクビの共通点と相違点について、著者の考えを200字以内で説明しなさい。

問2: イヌ同士のコミュニケーションにおいて、アクビはどのような役割を果たしているか、200字以内で説明しなさい。

問3: ヒトとイヌのコミュニケーションにおいて、アクビはどのような場面で見られるか、200字以内で説明しなさい。

問4: ヒトのアクビをイヌはよく観察していると筆者は主張しています。これを筆者が巧みに活用した例が記されている部分を、600字程度でできるだけ面白く訳しなさい。

(2017年度イシマル大学入試問題より)

 ほんとに面白い本ですよ。どうせ訳すならこんなのがいいな。

 

Ω


『闇よ、つどえ』と訳者のこと

2016-10-30 08:15:15 | 日記

2016年10月29日(土)

 へっへっへ、あった、ありましたよ!

   『闇よ、つどえ!』 フリッツ・ライバー著、風見潤訳 ハヤカワ文庫 SF 451

 昭和56年10月31日発行とあるが、ISBN などは記されていないところに年代が表れている。僕は1988年の暮から89年1月末日にかけて読んだらしい。大分から福島に移って、何かとしんどかった時期である。

 インターネット検索で情報が出なかったのは「つどえ」を「集え」と書いたためらしく、正しくひらがな表記で探してみたらちゃんと古書が出てきた。表紙のデザインが、これでは少々残念な感じだ。

 

 2008年の日付でカスタマーレビューが一件だけ載っているのだが・・・

 「「闇・・・・・・」で始まるから、「闇の聖母」と関係のある作品かと思ったが全然違うので、まいった。SFホラーファンタジーと勝手に思い込んでいたので、悪魔と天使の政治がらみのサスペンス的展開とは、いささかまいった。読破後も何も感じられず、いったい何が書いてあったのか思い出せない。きっと、その程度の作品なのだと思う。

 「SFホラーファンタジー」にのけぞり結句に仰天、「その程度の作品」には恐れ入った。僕自身とりたてて好きな作品ではないし、難癖つけようと思えばポイントはいろいろあるが、とてもこうは書けない。自分のアタマがその程度なのだという可能性を全く考えずにいられる夜郎自大ぶりが、何ともまぶしいのである。

 それよりも風見潤というこの訳者、同書刊行の時点でまだ36歳だが、既に多数の訳書があったのだ。その後はどんな風だろうと検索をかけて、出てきた情報に驚いた。wiki の記事自体が推理・SF系の虚構ではあるまいかと空恐ろしい感じに襲われる。コピペしようかと思ったが、やめておこう。

 それよりも、そもそもこの作品のことを思い出したのは「交感/副交感神経系活動の伝染性」の流れだったのだから、その部分を引用して僕の怪しげな記憶の証を立てておく。

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 「副交感神経系統を刺激する放射線は油断のならぬやつで、人間の本能的・動物的反応を助長する。最初はほんの数人だったが、すぐに大勢の俗衆が身体を揺すり、ねじり、回転させ、半宗教的な恍惚感にひたって踊りはじめた。彼らは動物のように鳴き、叫び、うめき、普通の勤行ではなく、まるで信仰覚醒大伝道集会のようになってしまった。」(P.117-8)

 「逃げる群衆のなかにまぎれこんでいた魔人は、自分の感情がふいに変化したのを感じとった。副交感神経放射線が交感神経放射線に変わったのだ。これはあまり賢い変更とはいえなかった。大聖堂に残って踊りまわり、床を転げまわっていた人々が一瞬にして、動きを止めた。交感神経系は恐怖感を助長するのだ。人々は暴走(スタンピード)する動物のように戸口に押し寄せた。」(P.119)

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 う~ん、せっかくのアイデアがもったいない感じがする。あまりに非科学的すぎるものね、だけど惜しいな、ここから何かを取り出せないだろうか・・・

Ω