> 1842年5月25日、オーストリアの物理学者クリスチャン・ドップラーはプラハの王立ボヘミア協会の会合で、星の光の色に関する論文を発表した。内容は「波の振動数は波源と観測者の相対運動によって変化する」ということを数学的な関係式で表したものであった。今日「ドップラー効果」として知られているものである。
その三年後の六月、オランダの気象学者クリストフ・バロットが実際にこの数式を検証するため、音で実験を行った。列車を使った「ドップラー効果」の実験である。
同年ドップラー自身も同様の実験を行い、詳しい記録が残されている。それによると実験方法は、まず絶対音感を持っているトランペット奏者を複数集め、二つのグループに分ける。片方を屋根のない貨車に立たせ、残りを駅に配置する。列車が駅を通過するときに、同じ音程でトランペットを演奏しているのに「ドップラー効果」のため不協和音になる、というものであった。
ドップラーは1846年に、この実験結果から音源の移動と観察者の移動の両方を合わせて考察した、論文の改訂版を発表した。
晴山陽一『365日物語』(創英社/三省堂書店)P.151
Christian Andreas Doppler
1803年11月29日 - 1853年3月17日
ドップラー効果と言えば、まず音について先に習い、ついで同じことが光についても言えるという順序で教わったかと思うが、上述はその逆である。そもそも物理学者の頭の中では、音といい光というも「波動」という意味で本質的な違いはなく、ただ音の方が実証しやすかっただけのことに違いない。
それより、よく分からないのが絶対音感の話である。両者の吹いた音が不協和音を生むという話だったら、奏者らが絶対音感をもつことは特に必要ないのではないか。
別のソースを見てみると…
> オランダ人の化学者・気象学者であるクリストフ・ボイス・バロットが、1845年、オランダのユトレヒトで、列車に乗ったトランペット奏者がGの音を吹き続け、それを絶対音感を持った音楽家が(駅に立って)聞き、音程が変化することで証明した。
この方がわかりやすい(カッコ内は引用者加筆)。
何しろ設定に遊び心が感じられて楽しいことである。わざわざトランペット奏者や絶対音感の持ち主を動員しなくても、汽笛の音を横から聞くときと進行方向から聞くときとで音程が変わるなど、証明だけなら仕方はいくらでもあったはずだ。さすがオーストリアと思ったが、トランペットの実験を行ったバロットはオランダ人でしたね。Dutchman のステレオタイプを覆す、洒落た装いと言っておこう。
図と資料:https://ja.wikipedia.org/wiki/クリスチャン・ドップラー
Ω