2023年8月10日(木)
ある組織のある会議で、ある人が「近隣からの苦情を受け、塀沿いの樹木を伐採しました」と報告、配布資料にも同様に記されている。
思わず目を向いた。
「伐採、しちゃったんですか 、苦情があったからって ?」
「はい、確かにずいぶん枝が伸びていましたので…」
こちらの剣幕に驚きうろたえ気味、何がいけないんですかと当惑の様子でもある。さてはわかった、
「もしかして、枝を伐ったってこと ?」
「あ、はい」
「……」
国語辞典を使いましょうよ、日本人なんだから、と言いたくなるのはこういう時である。
【伐採】樹木を切り取ること。木材などを切り出すこと。(岩波国語辞典 第四版)
不要な樹木を切り倒すこと (伐採110番)
【剪定】枝の一部をはさみ切ること。庭木などのかり込み。(同上・上)
木の枝を切ること (同上・下)
見回せば「剪定」の意味で「伐採」の語を使う人は、他にも一人ならず見られている。おおかた「ばっさり切り落とす」といった語感に後押しされたもので、「吐き気・嘔吐」の意味で「おえつ」と言うのと同類の錯誤ではあるまいか。
こういうのは早晩、悪貨が良貨を駆逐して主流の座につくものと思われる。
ついでながら、「手許の予備」という意味で「在庫」という人が最近たいへん多い。
「前回と同じ処方で ?」
「痛み止めはまだ在庫があるから、今回は要りません。」
という具合。すごいですね、商売してるんだ。
【在庫】(取引に備えて)品物が倉庫にあること。(岩波国語辞典 第四版)
薬局の棚にあるのが「在庫」である。「在庫」の「庫」は「倉庫」の「庫」、つまり「庫(くら)」のことだ。処方薬が自宅の引き出しに残っているのは「手持ち」とでも言ったらよい。
日本語は難しいって ?
こんなの何語だっておんなじですよ。
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