集団的自衛権を行使しての機雷除去うんぬんかんぬんで
昨今よく耳にするホルムズ海峡ですが、
海峡に直で面したムサンダム半島をカヤックトリップしたことがあります。
海峡を隔てて40キロ向こうはイラン。
こちらはオマーン。
ここが海況封鎖されると原油タンカーが通ることができなくなり、
そうなると全世界で石油ショックが起こってえらいことになるということで、
国際情勢の緊張感が如実に反映される場所として有名ですが、
現地は一見すごく平和で、むしろ全然緊張感が感じられませんでした。
まあだからといって平和ということでは決してないのですが、
意外と緊張感が感じられないというのも、えてしてそういうもの。
イメージとして、セキュリティがめちゃ厳格かと思うでしょう。
ところが全然そうではなく、
毎朝、対岸のイランから漁船で海峡を渡ってくる庶民がいて、
ドバイからの日用品、商品を積みこんで帰っていました。
海上でその連中がよく近寄ってきて、
「おーい、そんなにゆっくり進んでどこへ行くんだ?
カヤックごと舟に乗ってけよ。イランまで連れてってやるぜ」
と声をかけられたものです。
その気になれば楽勝で密入国できるくらいのレベル。
それがホルムズ海峡。
沿岸は陸路がなく、海からしか行けない集落がたくさんあります。
そういう場所をよく訪れました。
そういう場所は今でこそ陸の孤島ですが、
百年以上前までは海のシルクロードの「道の駅」みたいな存在として、
大いに栄えた場所でもあります。
そのDNAからか、人々は旅人に親切で、よくメシとかごちそうになりました。
言葉も、アラビア語に、英語、ウルドゥー語、ヒンドゥー語、スワヒリ語などが
ちゃんぽんされた、特殊な言語を話すようです。
イランから海峡越えて行き来するというのも、
千年以上前からのごく普通の生活習慣だったのでしょう。
オマーン海軍も事実上、黙認しています。
ニュースには絶対出てこない、現地特有の空気感。
そういうやつを嗅ぐのもカヤック旅の面白さですね。
実際、千年以上前の海のシルクロード時代のヴィジョンのようなものが、
あるいはアラビアンナイトのシンドバッドの冒険に出てくるような世界が、
アラビアのお香の香りと共に、何度も脳裏を駆け巡りました。
カヤックとは、自然の懐深く入っていけると同時に、
異国の日常生活の中にも深々と 入っていける道具でもあるのです。
歴史時間をも越えて・・・。
最強の旅ツールですね。