一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2143  交番に入りしカマキリ喧嘩ごし  凛

2020年08月04日 | 

 カマキリは、蟷螂(とうろう)とも言う。名前の由来は、「鎌で切る」から「鎌切り」となったという説と、「鎌を持つキリギリス」からという説がある。

 さてこの句、そのままの解釈では意味をなさない。カマキリを人間と見立てて読むといい。つまり、カマキリのような酔っぱらった男か女が、交番の若いおまわりさんに食って掛かっているのだ。

 交番には、落とし物、例えば子猫や子犬を拾って届けに来たり、逆に落とし物をしたので探して欲しい、認知症の母親がいなくなったので探して欲しい、などと様々な依頼が舞い込む。

   猿や猪が出たから捕まえて欲しい、泥棒に入られた、人が車にはねられた、などと様々な問題を解決しなければならないのが、おまわりさんなのだ。本当にご苦労様です。

ヤマユリ(山百合)

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2141  県道を渡り切れずに青大将  炎火

2020年08月01日 | 

 この句、青大将が県道を渡り切れなかった。唯それだけのことだ。だからどうなのかと言えば、車に轢かれて死んだに決まっている。

 作者が、車に轢かれて青大将の体が飛び散った現場を目撃したのか、何台もの車に踏みつぶされて何時間も経ち、ぺちゃんこになって干からびてから見たのかは定かではない。

いずれにしても、青大将だ、と分かったのだから、轢かれてからそれほど長い時間が経っていないだろうことは分かる。

 たまたま、悲惨なことだから、作者ははっきり言わなかっただけかもしれないが、ここに俳句作りの面白さがある。俳句は、言いたいことは言わずに伏せておいて、読者に一任する。従って、読み手の読み解く力量が問われるのだ。

ギボウシ(擬宝珠)

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2140  これから行く虹の真下のラーメン屋  雲水

2020年07月27日 | 

 毎日鬱陶しい日々が続いている。梅雨が明けないまま、立秋を迎えそうな気配だ。近頃は特に、雨が降ったり止んだり、雷が鳴ったり、強風が吹いて豪雨になったり、突然雲間から陽が射したり、虹が掛かったりと変化が激しい。

 さて、鬱陶しいのは天気ばかりじゃない。コロナウイルスは収束しそうだったのに、第二波が東京を中心に広がりつつある。小池都知事や西村大臣は、「できるだけ外出は自粛して下さい」、と言っているのに、赤羽大臣は東京を外した真逆の「GO TOキャンペーン」を始めた。政府は何を考えておるんだ。これはきっと安倍政権の末期症状なんだろう。いやいやもしかするとこれは、日本の末期症状なのかもしれない。日本、先進国から転落?

 つまり、政府はブラジル大統領のように、「コロナウイルスは大したことはないから、自粛よりも経済を大事にした方がよい。致死率の高い持病持ちや高齢者は、死んでもかまわない」と、どうやら思っているらしい。

 というようなことを考えていたら気が滅入ってきたので、ラーメンでも食べに行くかと出かけたら、湯河原の町に虹が出ていたのでございます。アーメン、ソーメン、タンタンメン。

ヒオウギ(檜扇)

 

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2139  はね出たる赤子の足や夏祓  薪    

2020年07月06日 | 

    伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の禊祓(みそぎはらえ)を起源とする神事である「大祓(おおはらえ)」は、飛鳥時代の七〇一年には、宮中の年中行事として定められていた、という。毎年旧暦十二月の大晦日と、六月の晦日に執り行われていた。

    六月に行われる大祓が、「夏祓(なつばらえ)」で、「夏越(なごし)の祓」とも言い、心身の穢れや、災厄の原因となる罪や過ちを祓い清める儀式であり「名越の祓」「夏越神事」「六月祓」とも呼ばれる。現在でも、日本各地の神社で行なわれ、千三百年も続く伝統行事である。

    伊豆山神社でも、茅の輪を回って半年分の穢れを落とす人々、この後の半年の健康と厄除けを祈願する人々。子供を負ぶって祈願する親子などにもきっと出会うだろう。

ユキノシタ(雪の下)

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2138  老鶯や今日という日を重ねつつ  洋子

2020年07月03日 | 

    人は、生まれて以来、毎日、今日という日、「今の日」を重ねている。私の生きてきた時間を計算してみた。七十年五か月、二万五千日余りの今日を重ねたことになる。人は、今を生きるという。今を秒で表せば、私は二十二億秒余りの今を重ねたことになる。しかし厳密に数学的にいえば、今という時間は無限にゼロであり、今を生きた時間は無限大である。私たちの命は有限であるが、有限の中に無限が内包されている、ということになる。

炎火さんの句に

 五月雨や点なのかさて線なのか  炎火

という句があったが、時間で言うと、永遠という線の中の点は有限ではあるが、無限でもある。鶯の寿命は、運が良ければ八年、自然界では三~五年だそうだが、人間の寿命と本質的に同じなのだ。 

ガクアジサイ(額紫陽花)

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2136  アマリリス大音響の「新世界」 凛

2020年06月07日 | 

 アマリリスは南米原産。ヨーロッパで様々に品種改良され、九十種もある。色も様々でヒガンバナ科ではあるが、百合によく似ている。中には、トランペットに似たタイプもあるという。

 「新世界」と言えば、ドボルザークに交響曲第9番「新世界」がある。ドボルザークは、1841年チェコに生まれ、ヨーロッパで活躍した作曲家であるが、アメリカに招かれ、三年余りの間に弦楽四重奏曲「アメリカ」と共に「新世界」を作曲している。この時代には、ブラームス、スメタナ、グリーグ、グノー、シベリウス、チャイコフスキーなど、後期ロマン派、国民楽派が活躍している。

 さて、この句の大音響は、「新世界」に掛かってはいるが、アマリリスの説明にもなっている、と考えるのが自然だろう。つまり、アマリリスのスピカーから大音響で「新世界」が流れているのだ。

 又、戦後の人類に多大な影響を与えている新型コロナが収束した時に、一体どんな「新世界」がやってくるのか、という作者の不安と期待が入り混じっているのかもしれない。

キョウカノコ(京鹿子)

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2113  神の留守作り置きして旅に出る  パピルミ

2019年12月08日 | 

 陰暦十月を神無月(かんなづき)という。日本の神様が、全て出雲に行ってしまうので「神の留守」ともいう。本来は、醸成月(かみなんづき)神嘗月(かんなめづき)神な月(かみなづき)雷無月(かみなしづき)などと言われていたものを、中世の頃に神無しとの字を宛てたのが始まりのようである。

 出雲だけは「神在月」という。この話は出雲の御師が、出雲の都合のいいように考え出した法螺話なのである。そして、法螺が誠になって、正式に暦に採用されたのも面白いが、その後、出雲を除く日本全国の神様が留守では困るので、留守番をする神様(恵比寿神)もちゃんと考えられたそうである。こういう日本人の遊び心に、私は敬服してしまう。実に楽しいではないか。

 さてこの句、作者自身が作り置きしたのだそうだが、それだけではつまらない。留守中に、私達が困らないように、神様も作り置きしてくれたのだ。果たして神様は、恵比寿様の他に何を作り置きしてくれたのだろうか。

センリョウ(千両)

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2102  沢蟹の土手に避難や野分川

2019年10月14日 | 

 12日、昼食を食べてから、生まれて初めて公設避難所に行った。熱海市泉支所には、2階のホールと3階の和室に計20人ほどが避難していた。熱海市職員や地元のボランティアさんが、館内を案内してくれて、毛布を貸してもらった。

 台風19号は、午後7時頃伊豆半島に上陸したが、午後8時に風雨はぱたりと止んだ。台風の目に入ったのかと思われたが、実際は台風の形が崩れ、後ろが無くなっていたらしい。

 19号は、遠く、東北、関東、信濃方面に大雨をもたらす雨台風であって、河川氾濫による多大な被害をもたらした。風は、予報より意外と弱かった。

 強風雨の吹き荒れる最中、私は無謀にも近くの泉公園へ犬の散歩に出かけた。公園の境の千歳川は、濁流がごうごうと流れていた。足元を見ると、沢山の沢蟹が避難していた。公衆トイレの前を通ると、急にデンちゃんが紐を引っ張ったのでよく見ると、トイレの中に数匹の野良猫が避難していた。

 又、友人の話によると、東京から熱海へ来る途中、根府川で交通渋滞していたが、理由は沢山の猿が海側から山の手方面へ、旧道を横断して避難していたという。

ホトトギス(杜鵑草)

  

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2096  秋蝉のむくろを探す犬の鼻

2019年09月23日 | 

 我が家の犬デンは、いつも腹を空かせている。半年ほど前、犬に詳しい近所の知り合いから、「太り過ぎだ」と言われてしまった。確かに寝そべっていると、胸より腹の方が太かった。勧められるままに、朝晩二度のドッグフードを、2杯から1杯に減らした。そして近頃ようやく、胸より腹がやや小さくなった。

  しかし今度は、犬好き達から、「胃袋が歩いている」と言わしめるほど、腹を空かせている。散歩をすれば、地面に鼻を付けるように歩き、餌を探している。デンの大好物は、生きていても死んでいても第1に蝉である。草むらに鼻を突っ込み、何やら分からないが、その他虫らしきものを食べている。デンは、まもなく9歳になる。人間に例えれば、早60才くらいなのだ。

シロバナヒガンバナ(白花彼岸花)、リコリス

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2092  衛兵の頬に一筋汗の跡      海人

2019年09月07日 | 

 衛兵とは、警備・取り締まり・監視の任務についている兵、近衛兵などのこと。宮殿の門の前で直立不動している兵士。前句とは真逆の、自由とはかけ離れたことを、平気でできる多くの人間が、この世に存在しているのだ。例えば、突然背中が痒くなったり、頬を蚊や蚋に刺されたりしても、絶対に直立不動を崩さない。

 ナポレオンの数千人の軍隊は、間近に砲弾が落ちても、絶対に隊列を崩さなかったらしい。人間は、自分の任務を自覚すると、自覚させられると、洗脳させられると、死さえ恐れなくなるらしい。

 日本の官僚たちも同様で、安倍首相に忖度し、公文書を改ざんしたり消去したり、それを隠蔽するために、究極担当者が自殺したんだから大したものである。

アべリア

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2091  夏休み自由の刑に処せられる   炎火

2019年09月06日 | 

 夏の海辺の超高級ホテルで、日がな毎日飽きずに、ボーっと景色を眺めたり、読書をしたりできる人が、本当の大金持ちや貴族である。椅子に座ってボーイを呼び、冷たいカクテルを注文する。夜は、同じ人種とパーティを開く。そんな生活に、貧乏人は退屈して我慢できないのだ。

 結局人々は、自由より束縛を望む。そうでなければ、不平不満を言いながらも、寿司詰めの満員電車に乗って毎日会社に通えるはずがない。

 俳句の五七五という定型は、明らかに束縛である。しかし、現今の俳句ブームを見れば、結局私たちは束縛の中の小さな自由に満足しているのであろう。

 

キョウチクトウ(夾竹桃)

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2089  線香花火呟くように落ちにけり  薪

2019年09月04日 | 

 

 俳句で「花火」といえば、大空に舞う大花火を指す。最近、その花火大会が中止の浮き目に会っているという。観客のマナーの悪さ、警備費のかかり過ぎ、安全を確保できない、などの理由である。熱海のように、年十数回もやる集客目的の花火大会もある。

さて一方、私達が店で買ってきて庭で遊ぶのは、「手花火」という。手花火には色々あるが、代表は何といっても「線香花火」だろう、と思う。しかし、夜の闇を昼間のように明るくしてしまった現在では、地味過ぎて今後見捨てられる運命にあるのかもしれない。

 この句のように、線香花火がぶつぶつと誰にも分からないように呟きながら、この世から消えていくような気がするのは、私の考え過ぎだろうか。

 線香花火が呟くのは、落ちる時というより、その前の火花が散っている時、という海人さんの解釈は、全くその通りであるが、かと言って、この句が揺らぐわけではない。

カラスウリ(烏瓜)雌花

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2085  何時逝くもよろしき齢墓洗ふ  保子

2019年08月19日 | 

(いつゆくも よろしきよわい はかあらう) 

 7月30日に公表された日本人の平均寿命は、男性81.25歳女性は87.32歳で過去最高を更新した。ところが、健康でいられる健康寿命は、およそマイナス10年だ。つまり、長生きをしても10年前後は病気や介護で不健康な日々を送らねばならないことになる。従って、「長生きはしなくていい」と、長生きを否定的にとらえる人が増えているのである。

 先の参議院選挙で、「安楽死制度を考える会」は、26万票余りを獲得した。数としては多くないが、潜在的な国民の関心の強さを示している。薬漬けの延命治療を拒否する権利や安楽死の権利を立法化しようという議論さえしない政治家の無策は、困ったものだ。

 この句のように、平均寿命を過ぎたらいつ死んでも不思議でないわけで、ほとんどのご老人は、覚悟を決めているだろう。

 しかし一方、自動車がドローンになって、自由に空を飛べるのはもうすぐだろう。IPS細胞による臓器製作が可能になって、あらゆる臓器が移植できるようになるのももうすぐだろう。AIロボットの開発が進み、重労働や単純作業から人々が解放されるのは十数年後かもしれない。ベイシックインカムが導入されて、全ての人々が貧しさから解放され、人生を豊かに暮らすのも近いはずだ。そんなことを考えていると、長生きしてそんな世界を見てみたい、と思うのは虫が良すぎるだろうか。

 保子さん、今年は台風10号の余波の大雨が、我が家の墓を洗ってくれました。

クサギ(臭木)

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2083  睡蓮や金魚言葉の泡三つ

2019年08月07日 | 

 人類は、戦争の歴史だった。宗教、哲学、文学など戦争を否定し、平和を希求する努力はなされたが、結局次々と戦争は生まれた。第二次世界大戦終戦から74年。人類は、次期戦争を回避できるだろうか。

 アメリカのトランプ、中国の習近平、ロシアのプーチン、トルコのエルドアン、北朝鮮の金正恩・・・彼らの人相は、非常に自己中心的で非人間的、そして好戦的である。さて、世界の今後はどうなるのであろうか。

 我が家の金魚たちも、世界の動向を論議しているようです。

ツユクサ(露草)

台風8号、9号、10号、三つの台風が日本近海で活動中

10号が日本列島に接近するらしい。注視しましょう

 

コメント (2)
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2082  蜘蛛の網の一本を切る蜘蛛落ちる  海人

2019年08月06日 | 

 八メートル幅の道路の真ん中から一本の蜘蛛の糸が垂れていて、左右の木立の枝にも一本ずつ繋がれ、真ん中に立派な蜘蛛の巣があり小さな蜘蛛がいた。私は、驚きと共に、どうやって巣を作ったのだろうという疑問が浮かんだ。

 一番上までは自力で登ったとしても、左右に糸を張るのは至難に違いない。可能にするのは、やはり風だろうか。海風に揺られて右の木に届き、山風に吹かれて左の木に届いたのだろうか。この句を見たとき、そんな情景を思い起こした。

 この句には、大泥棒犍陀多が、後から登ってくる罪人たちに「下りろ」と喚いたとたんに糸が切れ、真っ逆さまに元の地獄に落ちた話。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が、底辺に流れているのかもしれない。

コマツナギ(駒繋ぎ)

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