一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2237   冬近し被災跡にも煮焚きの火  裕

2021年11月05日 | 

 NHKの連続ドラマ「お帰りモネ」が終わった。原作者安達奈緒子の脚本と一木正恵の演出が秀逸である。東日本大震災に被災した気仙沼の人々の悲しみや葛藤を描き、立ち直ってゆく過程を描写している。気象的水の循環や水産業の漁や牡蠣の養殖など、専門的なことも詳しい。

 気仙沼市では、3、11での死者は1218名、行方不明者は未だに214名である。仲良く支え合ってきた妻を失ったことを受け入れられない男の苦悩。祖母を残して逃げてしまった一生消せないであろう娘の後悔。姉妹でさえ震災時の状況が違って分かり合えなくなってしまう。しかし、心を通じ合う時の少ない言葉の演出に説得力があるのだ。

 身内や友人を失った人々の様々な状況を描いたこのドラマの視聴率がそれほど高まらなかったのは、内容が視聴者には重過ぎたからかもしれない。

 さてこの句の作者が、放射能汚染による福島の避難民であることを想うと、住む場所を失った喪失感はいかなるものか、想像を絶するであろう。しかし私には、一日も早く帰宅できるよう祈ることしかできない。

シュウメイギク(秋明菊)

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