掲句は亡くなった人を見送った悲しみの句であろうか。石蕗の花は、寒くなってゆく初冬に咲くゆえに、なんとなく淋しさや悲しさのイメージとつながっているようである。例えば
さびしさの眼の行く方や石蕗の花 蓼太
つはぶきはだんまりの花嫌ひな花 鷹女
病まぬ生より病める生長し石蕗の花 波郷
逆に石蕗の花の黄を明るさと見立てた句もある。例えば
母我をわれ子を思ふ石蕗の花 汀女
賛歌や地に沈金の石蕗の花 夫佐恵
どこへでも行ける明るさ石蕗の花 佐弓
いずれにしても石蕗の花は、キク科の常緑多年草で、関東以南のどこにでもあり、丈夫で庭園にもよく植えられ、格好の俳句の材料である。
鰯雲