作物は、実を付けると種子を残す。その種子を蒔けば、次年度の作物が育つのが本来だ(固定種、在来種)。しかし、現代農業では種苗会社から購入した種子を使って作物を生産することが一般的になった。種苗会社の種子のほとんどは、一代交配種(F1)という種子で、実った種子を採って次年度に蒔いても同じ実りが期待できない。従って、農家は毎年新しい種子を購入しなければならないのである。
一方、米、麦、大豆などの主要作物は、国や都道府県の農業試験場で新品種の研究などによって、種子が守られてきたが、その種子法が2018年に廃止され、民間に開放された。
又、バイオテクノロジーが進化し、遺伝子組み換え種子が生産され、問題になっている。例えば、アメリカ大手のバイエル社(旧モンサント社)は、自社除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え大豆の種子を作った。これは、除草剤を撒いたとき、雑草は枯れても大豆だけは枯れないのである。しかし、その安全性が大いに疑問視されている。
さて、人間誰でも死ぬことは分かっているが、「一年以内に自分が死ぬ」とはほとんど考えてはいないだろう。だから当然のこととして、来年のために種子を採るのである。この句、作者が卒寿であるが故に、ことさら説得力があり感慨深いものがある。
ミソハギ(禊萩)