家でさえこうでしたから、私が何処で話をしても、子供の事、体よくあしらわれてしまうのでした。
中には寄付ね、それはいいと、で、何処に出すの?と、言う人もいましたが、
こう言われたら言われたらで、何処に出すのかさっぱり分からない私でした。
何処に出すか聞いてからおいでね。と、言われれば家に訊きに帰るしかないのでした。
そういえば、と父が言います。
今回は何処に幾らとか言ってこないな、父さん何か聞いたかい。
と父は祖父に尋ねます。さあなと祖父も知らない様子です。
何時もならもう疾うに回覧が回るはずなのに如何したんだろう。と父は不思議そうです。
父の言葉に、祖父は渋い顔で溜息を吐くと、今、回覧は誰が書いている、あちらの家は今回どうだった?
何か酷い事になったとかいう話じゃなかったかい。と父に言うので、
そうそう、何処か崩れたとか言っていたな、何しろ一番古い家だから。
そんな時に人さまの事まで気が回るかい?お前ならどうだい?と祖父が言うので。
そうだなぁ。でも、仕事は仕事だから、ちゃんと回覧を回してもらわないと、寄付もできないだろうと、
どうやら父は寄付には乗り気のようでした。
お前、寄付するのかい、あれだけ言ったのに、と、祖父は暗い顔で私の方をにらむのでした。