Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

竹馬の友、16

2016-12-08 22:25:00 | 日記

 困っている人だよ、助けたくないの?お父さん。

私は、父に確認するように尋ねます。

困っている人や悲しんでいる人を助けるのはいい事でしょう?

人を助けるのは親切なんでしょう?

お父さんが普段、私にしなさいと行ってる事じゃないの?

  ふぁははははは、

祖父が不思議な笑い方をして、

お前の日頃の教育の賜物だのうと言うと、祖父の顔にはやはり不思議な笑みが浮かび、じーっと私を見るのでした。

お前商売に精を出さずに、何時もお前の云う処の教育という物に熱心だった成果がこれかい。

祖父は一見愉快そうに微笑んでいました。

 お祖父ちゃん、私の行いに上機嫌なんだわ、ここはもっと頑張って父に寄付を出させなくては。

と私は尚もにこやかに父に詰め寄ります。

 「寄付、寄付、寄付、寄付!、お金、お金、お金、親切、親切、親切!」

ね、お父さん。と父の膝に手を置いておねだりします。

してよ、いいでしょう、Junちゃんのお願いと。私はしたり顔です。

 家は酷い目にあって無いでしょ、と、寄付を出すべきだとせっせと訴えます。

家だって、と、父は言いかけましたが、祖父がこらこらと言うので、黙ってしまいました。

父はそのまま黙して何も語らず、お金を出すとも駄目とも言いませんでした。

 親切だよ親切、カッコイイ、お父さん。

と私が言うと、そうだなぁと父は漸く朗らかな笑顔を浮かべます。

お前がそういうなら、と父が言うと、祖父はすかさず

ほらそんな風に直ぐ、こんな小さい子にまで女の子ときたら鼻毛を抜かれて、

と全くお前と来たら結婚しても子供が出来ても変わらない。

と、呆れ顔でした。

 ここで、どうやら祖父は寄付には反対らしいと私は気付きます。

お祖父ちゃん寄付には反対なの?と、父に尋ねてみると、さあなぁと父。

寄付自体には反対じゃないだろうけど、こう何回もではなぁ。と、

○○川が溢れたのは今回が初めてじゃないから、その度に寄付寄付だからなぁと、

冴えない顔でしょんぼりした感じでした。

 お祖父ちゃんの事はお祖父ちゃんに聞いてみたらと言われて、

一応、お祖父ちゃんは寄付に反対なの?と聞いてみます。

お祖父ちゃんは笑顔のまま黙っていました。

 お前あの寄付何処へ行っていると思う?と祖父は父に尋ねるので、

父は被災者だろうと答えます。祖父はやっぱりねと言う顔でうーんと言うと、

あれは実は○○に吸い上げられているらしいと言います。

え、そんな事が、そうすると○○は丸儲けじゃないか。そんな事がと言う父に、

祖父はお前は世の中を知らないと言います。

こっちは身銭を切ってまで出すんだから、ちゃんと被災者に届くという保障が無いと…。

祖父は言葉を濁すのでした。

出せ無いには出せない、出したく無いには出したくない、双方に理由があるのでした。

 

 

 


竹馬の友、15

2016-12-08 21:21:00 | 日記

  答えが出ない問題があるなんて。

私が釈然としない面持ちで部屋に座っているとLさんは続けます。

洪水を防ぐ事は難しいし、もう起こってしまった事だから、

先ず今悲しんでいる人を救わないと。

そんな話になり、それなら答えがあるし、そう難しい事じゃないとLさんは言います。

 答えがあるの、難しくないの?どうするの?

私が夢中になって聞くとLさんは、皆んなで寄附金を集めたり、沢山の人に寄付を頼んだり、

寄付も、少ない人でもお金持ちなら沢山お金が集まるし、と、そんな話になりました。

兎に角、最初に今困っていない人に、困っている人の話をして回らないと、

先ずはそれから、とLさんに言われます。

  そうか、それなら任せて、人に話して回るのは私得意なの。

私はそんな事を言って早速立ち上がって帰ろうとします。

が、ちょっと待って、今日はまだ遊んでないし、とLさんに引き止められました。

  そうねと私は元の場所にしゃがみこみ一旦腰を落としたものの、

心はここにあらずの上の空、暫く遊んでみたものの、

やはりごめんね、今日はもう帰る、早速悲しんでいる人の話をして回りたいからと、

ぱっと立ち上がって、早々にLさんの家を後にしたのでした。

  帰り道、早速いつも相手をしてもらうおばさんに寄付の話をしてみます。

それで誰に言ったらよいかしらと尋ねます。

  それは先ず家の人に言ってからにしないと、

と、これは体良くあしらわれたのでしょうが、私はそうかと家に一目散。

帰って早速父に訴えます。

 「寄付か、そうだな、家に人を助けるだけのお金があるかな。」

と、父は顎を撫でて、

父さん父さん、ここが寄付しろとかいうぞ、と、私を目で指し祖父に訴えます。

それ見た事かというように父は祖父に合図して、

そんな事をあそこで習って来たんだなと言います。

 あーあ、又毟られるのか、家にお金があると思って、世間の奴等ときたら。

父は不満そうに言葉を吐き出すのでした。

私は何時もと勝手の違う父の様子に不信な物を感じます。

 「父さん、寄付だって、寄付。」

お定まりだなと背を丸めてぼそぼそ言う父の言葉と様子に私が目を見張っていると、

そんな私と父、2人の様子を黙って見ていた祖父が、

子供の目の前で言っていい言葉と態度なのか?

と頑として父を諌めました。

 父はハッとして、漸く私が神妙な面持ちで黙って父の側に居る事、

そんな私に妙な目で見られている事に気付きました。

 

 

 

 

 

 

 

 


竹馬の友、14

2016-12-08 11:26:21 | 日記

 今日はLさんの家に遊びに行く予定の日です。

多い日は毎日。大抵は1日おき。2日置くという事はあまりなかったので、

やはり今日は遊びに行かねばなりません。そう思うと溜め息が出ます。

何故なら、前回の訪問の時に、

如何やったら災害の被災者が出ないように出来るか考えた?と聞かれて、

私は全く答えられなかったからでした。

 前回、そんな難題を考えて行かなければならないとはつゆ知らず、

私は何時もの遊びのつもりでLさんの家に行きました。

そこで答えは何か出たかと聞かれて、

「考えて来なければいけなかったの?」

とびっくりして聞くと、

彼女は当たり前だ、如何やったらそれが出来るかと聞いたでしょうという感じでした。

 私には何を如何やったら良いかなんて全く見当もつきませんでした。

え、え、?と、全く何も思い浮かばないので、頭の中が真っ白というよりも、

あの濁り水の海原の背景にあった梅雨空の色のようなグレーな色になりました。

灰色の何かが浮かぶ脳細胞とは逆で、全く何も浮かばない脳細胞のままだったのです。

 Lさんに次まで考えてきてね、と、前回のお別れの時に念押しされていたので、

昨日は行かなくても普通なので遊びには行かず、今日は如何しようかと思いながら、

2日空けるのはあまりない事だからと、答えが出せるはずもない私ですが、

今日行かなければ考えられないのだと、無能さを更に暗示しているだけだと思うと、

それもしゃくだなと思い、Lさんの家に今日は遊びに行こうと決めたのですが、

提示された問題の答えが出ていないので、考えても何も浮かんでこないので、出てくるのは溜息ばかりなのでした。

 あー、嫌だな、そう言っていると、嫌なら行かなければいいのにと、傍で私の様子を見ていた父が言います。

あの子が嫌なんだろう、難しい事ばかり言って。そう父が言うので、

Lさんが?嫌なんじゃなくて、何も答えを考え出せない私が嫌なの。

そう父に答えて、私はまた深々と溜息を吐くのでした。

 何か少しでも考え出せるといいのに、本当に全く何も浮かんでこないのです。

洪水で悲惨な目に合う人々を出さない為には如何したらよいか。

苦しんでいる人々を救う為にはどうしたらよいか。

 よし!と私は決めます。

勢いをつけてLさんの家まで出発です。

とはいえ、途中の私の足並みはゆっくりになり、道々もう1度と問題について考えてみます。

 前回、Lさんは答えの出せない私に業を煮やして、ヒントをくれたのでした。

もう、仕様が無いからヒントを出すね。

困っている人や苦しんでいる人は、何故困っているの。

何故困る事になったの?

 これは分かります。○○川が溢れて洪水になったから。

住んでいた家に住めなくなったから。家が無くなったから。

ですよね。

家が無いとご飯を食べたり、寝たり出来ない。

単純に考えるとこんな感じでした。

 今回こんな話から始まり、他にも着る物がないとか、遊び道具が無いとか、本も無くなってしまって読めなくなるとか。

前回沈黙しがちだった話の流れが、漸く何時ものように滞りの無いお喋りの場らしくなって来ました。

こんな嫌な事の、一番元になった物、原因は何だと思うかとLさんが聞くので、

それはもちろん、洪水が起きた事だね。とここまで会話は辿り着きました。

 だから、この大本の洪水を無くせばよいんだよ。

なるほど、と、幼児にとっても納得のいく話の展開になりました。

しかし、川の流れや、水の多さ、雨の降る量なんて、どうやって防ぐ事が出来るでしょう?

私はまたこの問題を考えるのかと思うと、頭の中だけでなく心の中にまで暗雲が立ち込めて来そうでした。

 「こんな問題考えても分からないの!」

と、あっさりLさんが見切りをつけるので、私は相当面食らってしまいました。

 「え、考えないの?考えなくていいの?」

そう、答えの出ない問題だから。とLさん。

えええ、と私は直ぐには納得できない状態のままでいました。

 答えを考えなければいけないと、あれだけ様々に思い悩んでいたのに、

ここで行き成りの決着が付いたのです。しかも未解決のままです。

それでいいのだというLさんに、じゃあ何で問題だからと、考えてと言ったの、答えが出ないのに。

と、私は怒るというよりも、知り切れトンボになってしまった問いかけに、

踏ん切りがつかないような曖昧模糊とした感情のままで終わる問題に、

このままお仕舞だなんて。と、何だかやり場のない感情を抱いたままで終息できない状態のままでいました。

 考える事が大事なんだよ、とLさんは言うのですが、

私にすると問題や問いかけには必ず答えがあるものだと思っていましたから、

答えのない問題を出す方がおかしいと、これはその問題を出した人に怒りが湧いて来ました。

 答えが必ずある問題ばかりを解いてきた私には、考えるだけで答えのない問題なんて論外だった訳です。

今から思うと、世の中答えの出ない事だらけなんですが、確り答えの出る世界にいた年代だけに収まりがつかなかったのです。