型にマシュマロを注ぐ時にも、手が震える様な緊張感を感じていました。これはお菓子を上手に作りたかったからですが、カタクリの白い粉の中でコロッとフルっと揺れるマシュマロエキスに、半透明になった液が揺れる度に、失敗するのではないか、これは失敗なのではないかと私の額には皺が寄りました。側では祖母が面白そうに私と私が作るマシュマロを観察していました。
私が、白い粉の中で揺れるカタクリ団子に思わず「失敗した」と言うと、空かさず「大丈夫、成功してるから。」と祖母は私を安心させるように言ってくれました。しかし、このお菓子を全く初めて作る私には、どこまでが成功で、どこまでが失敗なのか等、全然見当が付かず、五里霧中という状態でした。祖母のこの励ましの声掛けにも、緊張から返って苛々とすると、「お祖母ちゃんは作った事が無いのに、何故成功していると分かるの。」ときつい言葉を祖母に浴びせてしまったものでした。その後祖母はしおしおと台所の母の方へと去ってしまい、後任には母ではなく父がやって来ました。
予想に反してやって来た父に、相変わらず私の方は不機嫌な顔をしていました。マシュマロの方はもう出来たも何じ、固まるのを待つだけでしたが、片栗粉の事です。出来上がりはゆるいわらび餅の様な物でした。わらび餅も食べた事のなかった私は、この不思議なお菓子の出来上がりにマシュマロと言うのは不味い菓子だと評価しました。それ以前に、そのぶんよりとした食感と、不思議な臭いの付いた味の不満足さから、これは失敗作なのではないかと判断しました。
しかし、如何いう訳かこのお菓子は「美味しいじゃないか」と、家の大人に大層受けが良く、後日、もう1度作って欲しいと迄言われました。何度か促されて、私自身は渋々手掛けてみたものの、やはり気乗りがせず母が興味を持って私に習いたがるので、途中から母に全てを任せ私自身はさっぱりとこのお菓子作りからは手を引いて仕舞いました。そして、現在まで、マシュマロを作ったことがありません。
今回ここに書き込んだので、マシュマロの作り方を検索したところ、でんぷんというよりゼラチンを使うお菓子の様なので、根本的に何か作り方にミスが有ったとしか思えないですね。確かにあれは、卵白入りわらび餅としか言いようの無い代物でした。後年、両親共にわらび餅が好物でした。私も今では好物です。