さて、そのプリンのレシピを私はどこで手に入れたのでしょうか?それは小学校の5年生の家庭科の教科書からでした。教科書に載っていただけにとても当てになるレシピだった訳です。
調理実習のページで、最初にプリンの調理方を見た時、作れるのかしら?と半信半疑、まず無理だろうと考えた私は、この項目をそう読むという事もせずに教科書を閉じてしまいました。元々家庭科の教科書を読本にするタイプではない私です。この時は他にどんな料理が教科書にあるのだろうかと、調理の項目だけ興味が湧いて拾い読みしたただけの事でした。
が後日、追々と、プリンという子供にとっては魅力溢れるお菓子に、何度かそのページをめくりながら、何時しか材料を眺め、よくよくその材料名を見てみると、バニラエッセンス以外は、普通に家の冷蔵庫にある材料ばかりだったのです。これはと、このバニララエッセンスという物だけどうにかすれば出来そうだと私は判断しました。そう思うと、調理法にも目を通してみて、何回か再読する内にそう難しく無いと分かると、こちらも自分にはやれるなと判断しました。
この頃の私はバニラエッセンスなど知らなかったと思います。未知の調理材料は、やはり家での調理専門の母に聞くしかありません。「バニラエッセンスって何?知っている?」という具合です。聞いた私が全然期待していなかっのですが、予想に反して、知らないかと思いきや、これを知っていた母に私はえっ!と驚いた気がします。「えっ!お母さん知ってたの!」という具合です。しかも確か当時、母の話は、それなら家に有るという話に迄なったと思います。(可なり記憶はあやふやです。)
何処にと私が尋ねると、母はここよと立ち上がり、進んで手招きし、居間にあった戸棚の中、影になった暗い隅を指して、ここよと、随分前から有るけど、何に使うのかと思っていたというような事を言ったようです。私がバニラエッセンスはプリンの材料に書いてあったというと、なるほどという感じでした。母はお菓子に使うのねというような事で合点し、それでここの暗い隅に置いてあったのだと、何やら顔を曇らせていました。