Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華4 2

2021-11-02 14:26:28 | 日記

 如何したのだろう?、家の奥からは何の返事も無い。何時もならばはーいと、清ちゃんの元気の良い声か、彼の両親の何方かの、智ちゃん遊びに来たの、等、明るく愛想の良い声が返って来る筈の家なのだが。如何した物かその日はシンとしていて、その家の屋内には全く人の気配が感じられなかった。

 妙だなぁ。私は首を捻った。この界隈にこぢんまりと佇んでいる家とはいえ、これでも清ちゃんの家は商売屋なのだ。大体、店に当たるここ玄関先に誰もいないのも妙だった。また、たとえ店にこの家の人間が誰もいないとしても、この家の店先である筈の玄関に誰か訪問した人物が立ち、声を掛ければ、それだけでもそれ客が来たとばかりにハイハイと、店の主人である彼の父だけでも顔を出してきそうな物だ。商売は主として清ちゃんの父が行ってはいたが、普段彼の父が忙しい時は彼の母も客の応対に出て来ていた。彼女ははいよとばかり威勢の良い声で客をあしらい、それ相応の対応をしていたものだ。私がこう考えを巡らせて妙に思う間も余り有る程に、この家の屋内には長い静寂が続いていた。

 『やはり誰もいないのかしら。』そう怪訝に思いながら、私は屋内に乗り出して覗き込んでいた自分の身をおずおずと清ちゃんの家の玄関から引き戻しに掛かった。

「智ちゃん。」

不意に玄関横にある階段の上から女性の声が降って来た。それは清ちゃんの母の声だった。

「智ちゃんなの?。」

確認する様に問いかける、それは確かに彼の母の声だ。

 私は、毎日の様に遊びに来ているのに、と思った。彼女に私の声が分から無い様子であり、誰かしらと疑問を持たれたらしい事を不思議に思った。また、この事で私は一寸自尊心が害された。十把一絡げ、一寸した子供の軽い顔見知り知り程度の扱いをされた、と感じたからだ。が、私も商売屋の子、そこはお首にも出さ無かった。そうだよおばさんとばかりに、自分では如何にも愛想よく階上へ返事をしてみせた。

 するとぽそぽそと階上で話し声がした。それは今のおばさんの声と他に誰か、その他にももう1人位は誰かいる様な、複数人の人が話し合う様な声に私には聞こえた。と、そろそろと、階段に清ちゃんの母親の姿が現れた。が、彼女は途中で立ち止まると、未だ彼女の顔は階上から姿を現さなかった。おや、おばさんだと思ったけど別の人かしら?。私は考えを改めるとじいっとその階段にいる人の体を見詰めた。階段にいる人物が女性で有る事は疑い無い。それは私の目に確かだった。服装も、おばさんの服装の様だがなぁ。私は心の内に呟いた。そうして置いて、私は彼女の顔が階下に迄現れて来るのを待った。


うの華 4

2021-11-02 14:26:28 | 日記

 気が付くと、過去に題名の「うの華」のうが、卯になっている回を幾つか発見した。華も花になっている。卯の花ではおからである。1つ直してみたがきりが無い。これは単純な変換ミスなのだ。そこでここでお知らせ迄と伝え置く事にした。それでも、これは案外、現代になると世に大豆の搾りカスの様な話であるのかも知れない。

 さて、いよいよ「うの華4」、起承転結の「結」の部に入る。正直、我ながらこの物語が最後迄行き着き、上手く1つの話として纏まるかどうかと甚だ不安に思っている。この物語を書き出した最初の1話、「起」から筆を起こした理由がこの4で明らかになる予定なのだが、私はそれをきちんと書き尽くせるかどうかとやはり甚だ不安に感じるのだ。

 それは今になると当時の私の記憶が極めてあやふやである事や、又、その動機自体を無理に私が書く事も無い様な気がする為だ。元々私が成す事も無い話なのだ、当時もそう私の方は言われていたのだから。無理する事も無いのだ。が、当時、私が大人になって、将来、出来る時に出来そうなら、何とか出来るかもしれないから、と、その時に私が口にしたという記憶が私自身に有る為だ。私にとってもそれは約束という程の取り決め事、制約は無い話なのだ。が、私は兎に角、この物語を最後迄書いてみようと試みる事にした。

 

 「清ちゃん、遊ぼ!。」

私は何時もの様に、ご近所の遊び友達の清君の家を覗いた。清ちゃん、遊ぼ!、私は家の奥へ向かって再びこの言葉を掛けた。