Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華4 10

2021-11-25 12:08:21 | 日記

 「竹馬の友」

彼女の唇から、この言葉とほうっとした微かに白く見える様な溜息が零れた。妻の言葉に階段の奥の空気が暗く淀んだ。彼女は慈しみのある微笑みを浮かべ玄関先へと静かに近付いて行った。

 玄関では子供がその淀んだ闇に気付いていた。子の意識は階段の暗がりが気に掛かる様子だ。自ずと視線もその闇へと向かい勝ちになり、友人の母親越しに子はチラチラと後を見遣るのだった。

「気に入らないんだよ。」

彼女は子に唐突に言葉を掛けた。「おじさんはこの言葉が嫌いなのさ。」彼女も気に入らなさ気に口にした。階段にいた夫はどキリとした様子で背筋を伸ばした。そうしてその階段に在った暗い雰囲気はみるみる改善した。

「俺にはそういった事が分からないんだ。」

彼は言い訳の様に口にした。そういう友達が俺にはい無かったから…。彼は言葉少なにそう言うと、静かに妻の方を見ながら立ち上がった。まだ彼の腰は引けている様子だった。夫の言葉に彼の妻は寂しそうな表情で彼女の視線を傍へと落とした。そんな夫婦2人の不協和音が奏でられる様子を、玄関にいた子供は具に目にしていたのだった。

 「竹馬の友だよ。」

怪訝な、自分の子の友人になった子の瞳に気付いて、彼女は再びこの言葉を口にした。が、今回のこの彼女の言葉は、ハッキリと彼女の目の前に佇む自分の子供の友人である子供に向けられていた。

 竹馬の友って、いいもんなんだよ。昔私にも、このおばさんにもいたんだよ。彼女は目を潤ませて語り出した。B 29でやられたんだ。天守堂と一緒に。ドカンって、音だけ、覚えてるんだ。

 友人の母の、おばさんの細く頼りな気な声に、子はジィッと彼女の目を見詰めた。そうしてその奥に在る彼女の悲哀を発見し、まじまじと覗き込んだのだった。


うの華4 9

2021-11-25 11:20:26 | 日記

 「友達だよ。友達は、友達だ。」

あの子からそう聞いているよ。とここで夫の後ろになっていた妻の声が入った。「ありがとう」囁くような声で、後方に目を遣ると夫は妻にか細く応じた。

 ここでバトンタッチ、声の出なくなった夫を見越して、彼の妻はその顔に笑みを作ると前方に身を乗り出して来た。夫は強張った体をずらす様にしてそんな妻と自分の位置を入れ替わった。そうしてその直後に、ストンと、項垂れた彼は妻の真後ろの階段の隙間にまるで吸い込まれる様に腰を落とすと、その儘、項垂れた儘で座り込んでしまうのだった。妻の方はそんな夫の姿に一瞥をくれると、直ぐに彼女の面を目の前の子に向けた。彼女は恐る恐る子に語り掛け始めた。彼女は努めて自分の相好を崩した儘にして置いた。

 「友達だよね、智ちゃんと家の清。」

目の前の子供は相槌を打って、ウンと首を縦に振るとフンと鼻の穴を膨らませた。よく有る『確かに』という子供等の行うボディランゲージだ、話し相手への合図だと彼女は思った。子供だねぇ、思わず彼女は呟いた。すると空かさず子の目にムッとした影が差した。

 「よく出来ている様でも子供だね。智ちゃんも。」

危ない危ない…。そう感じた彼女は、子供のご機嫌を損ねない様にと、茶目っ気の有る口調でこう子供のご機嫌を取った。そうしてその後も、彼女は二言三言と愛想の良い口調で子供への褒め言葉を並べると、曖昧に言葉を濁してその場を収めた。

 この時、この家の子の清の母である彼女は思っていた。目の前の智という名の子と、自分の子の清は今や既に幼い友人同士になっていたのだ、実際そうなのだ、と。今迄は自分の子の清の方の話だけだったと思うと、彼女の胸の内にジーンと湧き上がって来る熱い物が有った。

 


今日の思い出を振り返ってみる

2021-11-25 09:11:13 | 日記
 
今日の思い出を振り返ってみる

うの華 101 こんな古めかしい木のせいで怪我するところだった。「もう!」と私は床を掌でバシバシと打った。「痛!。」私は新しい痛みに声を上げた。床を打った掌を仰向けてみると、赤い血......
 

    雨の今朝。寒くなったせいか、はたまた暗いせいか、今日の目覚めは頗る悪かったです。何だか不安な近頃。

    スマホが不調になった頃から、何だか段々と不安感が増してくる感じです。何かの悪い兆しでなければよいのですが。私の悪い予感は当たりやすいので、不安。😓