Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華4 5

2021-11-09 10:31:55 | 日記

 おばさん、泥棒?…。私は小声で清ちゃんの母親に問い掛けた。そうなのだろうか?。2階には暗躍中の泥棒が?。私はこの家がとんだ取り込みの最中、危難にあっている時に折悪しく来合せたのだろうか。否、『折良くだ!』、私は思い直した。

 「おばさん、泥棒が入っているんだね。」、私は緊張に頬を紅潮させ、2階には聞こえない様、階段に踏み留まっている清ちゃんの母親に小声で囁き掛けた。するとおばさんの顔にも緊張が走った。私が見守る中おばさんの顔には影が差した。やはりそうなのだ、この家は緊急に迫られているのだ!。私は思った。緊急に迫られているこの家を、私の友達の清ちゃん一家を、折良く居合わせている私が救ってあげなければ。私は如何したら良いだろうかと考えを巡らせ始めた。その時2階の階段の降り口から声がした。

 「やっぱりおかしいんだろう。」

そう頭上から階段のおばさんに掛けられた声。その声の主はおばさんの緊張した雰囲気を感じ取った誰かの物だろうか、私は思った。そうしてその声はおじさん、清ちゃんの父の声にも似ている、と、この時の私は感じた。普通の調子に聞こえるその声が、もし私の感じた通りおじさんの物ならば、やはり2階には清ちゃんの家族だけしかいないのだろうか。私の取り越し苦労なのだろうか。こう私は思った。

 「大丈夫なの?。」、私はおばさんに声を掛けてみる。おばさんも、そんな彼女の様子を窺う私に向けてコクリと頷き、眩い瞳の微笑を返して来た。

 そこで私は少しほっとした。思わずふうっと詰めていた息を漏らすと、ポカンと口を開けて自分の頭上の天井を見上げた。頭上では誰か動き回っているのだろう。時折みしり、みしりと、控えめな音と振動が伝わって来る。

 「おい、大丈夫なのか。」

自分の声掛けに返事の無い清ちゃんの母に、苛立つ様に声が掛かった。それはハッキリと私にも分かる声だった。清ちゃんの父親の声だ。私は天井から階段に目を移した。そんな私が見守る中、階段にはその声の主がのっそりと姿を表した。それはやはり私の感じ取った通り、この家の主人で有る清ちゃんの父親だった。