舅はもとより姑とも離れて久しい。『姑さん…』彼女は思った。彼女は義理の母、姑と離れて暮らす事で自由を手に入れたと言ってよかった。自分の好きに料理の献立をし、子供達の世話、家事育児を自分の思い通りにする事が出来た。ここ何年かの親子だけの生活。
『今になって、舅は兎も角、あの姑とまた共に暮らせるだろうか?。』
ふいっと、彼女の脳裏に、姑が伏目がちに微笑む顔がほの白く浮かんだ。と、彼女はこの事について深く考えるより先に、ぶるっと、彼女の体の方が先に反応して身震いしてしまったのだった。『この調子では…、』彼女は思った。自分は姑の事をよく思ってはいないのだわ…。一軒の屋根の下、共に暮らしていた時にはそうも思わず、こんなに仲良くやれるなんてと、世間に聞く嫁姑問題等他所ごとに考え、自分自身姑との生活を上手く熟していると自負出来ていた。その事に何の疑問も持たないで生活出来ていたのに…。結局は自分も世間一般の嫁で有る。『普通の嫁自身で有る事に変わりなかったのだ。』、気付いた彼女は顔を曇らせて瞳を伏せた。その瞼の裏には、借りた家でのここ何年かの親子だけの生活、明るく開放的な日常、その場面場面の家族との遣り取りが幸福そのものの画として一コマ一コマクローズアップされて来る。
『駄目だ!。』彼女は思い、もう舅夫婦と自分が同居できないだろう事を予感した。『駄目だわ、多分無理だ。』彼女は思った。
「自由か。」
思わずポロリと彼女の口から言葉が漏れた。
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