『これだ、この子はこれだもの。』
年上の彼女の方は困りました。そして、胸に湧いてくるしみじみとした物で胃が痛い様な気がします。お腹に手をやりながら『この子、的外れな事を言うくせに、何だか何時も泣かせるような事も言うのよね。』と、胸にジーンと来る物がふつふつと湧いて来るのを感じました。彼女はその自分の内に湧いた確かな感情を確認しつつ、『鈍のくせに、人がいいんだから。』と呟きます。
彼女は溢れ出る歓喜が迸った涙の後の、今度はジーンと来てこんこんと湧きだした感激の泉が、目頭から沁み出してしみじみとした感涙になると、うっと咽びそうになりました。
『年上の自分が、自分の勝手でこの子の世話を他人に押し付けて来たというのに、その当のこの子は自分の事を思いやってくれているのだ。』そう感じ取ると、彼女は何だか自分のした事が後ろめたくなりました。自分がしなければいけない年下の子の世話を、赤の他人に押し付けて来た事が悔やまれて来ました。胸がチクチクと痛みます。そこで、やっぱりこの子の事は自分で面倒を見ようと考え直しました。
「また、一寸待っていてね。」
静かに落ち着いた様にそう言うと、年上のお姉さんはお姉さん然として背筋をしゃんと伸ばすと、きちんとした姿勢で元の広場に向かって戻って行きました。今回の彼女は普通の走りでした。2往復目なので疲れたからでしょうか?いいえ、彼女はやはり年下のこの子の面倒を見ることに気が進まなかったのです。
『仕方ない、これも身内の事だもの。』
この時、彼女は自分の父の弟にあたる叔父、その一人娘の自分より年下の女の子、その従姉妹の世話を焼く事を不承不承ながら確かに了承したのでした。
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