祖父の独り言でしたが、光君はその言葉を否定しました。
「否、あそこで待っていても、彼等は僕等に追いついて来るよ。」
あの世界と僕等が別物な様に、迎えに来る奴らも、僕らの世界か、またはもしかすると、別の世界の僕等と同じ位の文化水準の奴らかもしれない。否それ以上だと返って僕には好都合というものだ。労せずして益ありだな、彼はそう言うと、何時ものように自虐的な微笑みを浮かべてふふんと笑って見せました。
「 …しかし、このままじゃ誰が誰か分からなくなるな。」
それも、否、それで、 …それでいいのかもしれない。彼はそんな事を言い言葉を切ると、目の前の真新しい世界にのみ集中して注意を向けました。
「ここは何処で何時頃の世界だと思う?」
聞かれた祖父はさぁなぁと、やはり孫同様、辺りを注意深く見回して考えていましたが、見渡す限りの野っ原です。その先には木立が深く視界を塞いでいます。2人が立っている場所はどうやら森に続く平原のようです。彼が後ろを振り返ってみても、風景は前方の風景と大して変わりないのでした。彼は人家が目に入らない様子に何となく不安を覚えました。
「戻らないか、光。」
彼は、前以て孫からこの旅は片道のみの一方通行と聞いていましたが、やはりこの言葉を口にしてみるのでした。「ここは此処で自然に溢れていて良い所なんだろうが、人影が無いのが不安なんだよ。」
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