勿論、自分の後ろで怪しい動きをする外国人の中年のおばさんが気にならない訳はなく、やがて彼の後姿から不審に思い始めている気配が伝わってきました。そこで、私は彼から鬱陶しく思われるのも心外な事だと思いました。また、これだけ綺麗で目立つ人だから、大抵何処かに親衛隊のグループなど控えているのだろうと思い至と、予想される今後のトラブルを避けようと、今度は徐々に離れるべく彼との距離を空けて行くことにしました。残念ですが見納めです。私は休憩をとりました。
暫くして、彼の姿が見えなくなると私は再び本来の登山に集中し始めました。そして、何回かの休憩の後に、漸く頂上に辿り着きました。私は頂上に辿り着いた瞬間の事はあまり良く覚えていません。鎖を登り切ったところが頂上だったという記憶も無いのです。
開けた大地に出たと思い、一瞬地上に降りたのかと錯覚しました。今までのような、何処かに視界を遮る壁になっていた赤茶けた岩肌が無かったのです。大抵はその視界を遮る岩が次の踏破地となるのでした。
その上り詰めた台地が、今までの尾根と違って白っぽい赤茶色に見え、乾燥した感じで明るく開け、強い風が吹き渡っている感じでした。何だか今までと雰囲気が違うと思い、強風に靡く髪の乱れを気にしていると、ツアーの新婚さんのご主人が笑顔で私の目の前におられるのに気付きました。
「登って来られたんですね。」
にこやかに話しかけられて、ええと私が答えると、ご主人の後ろにいる奥様の方に○○さんだよ、来られたんだねというような事を話しておられました。奥様の方もこちらへ顔を向けて近付いて来られると、良かったですねと笑顔で挨拶されました。
「ここが頂上ですよ。」
そうご主人に言われて、私はええ、そう何ですねと頷き、やはり笑顔で応対するのでした。
「あそこに羅針盤がありますよ。」
ご主人の言われる場所に、確かに羅針盤の設置されている台座のような物が有りました。皆この羅針盤を見る事でここが頂上だと確認してホッとするのでした。私もその台座に近寄り、上に設置された羅針盤を眺めて、旅行社のパンフレットにあった頂上の羅針盤の写真と同じ事を確認すると、確かにここがウルルの頂上だと確信する野でした。
ここが天辺のゴールだと思うと脱力感でした。もう登らなくて良いのです。ふわっとした疲労感の中で、ウルル登山を制覇した達成感が静かに込み上げて来るのでした。 (ウルル頂上の羅針盤。皆嬉しくて、疲労感と共に羅針盤の傍の岩の階段になったような場所に腰を掛けて休んでいました。羅針盤の傍でご家族連れのお母様と出会い、お互いに頂上に来られて良かった、嬉しいですね。と共に喜び合いました。暫く話し、写真を撮っていただいたようです。お子さんのご兄弟も皆にこやかに座っておられました。ここからだと、北の方角が日本ですね。)
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