それでも冷え込んでいるような冷たさではありません。
不思議な事を言うと、叔父は姪の事を心配しながら、それでも笑って、
「ホーちゃんこそ、俺の事を揶揄っているだろう。こんなに暑いのに、どうして寒いんだい。」
と造り笑顔で尋ねてみます。
暑い?変ねと蛍さんも思います。そして叔父の顔をよく見て見ました。
叔父はこめかみの部分に汗の粒を付けています。本当に暑そうです。部屋の大気も確かに寒くなく、蛍さんが試しに吐いた息も白くなりませんでした。
しかし、蛍さんはやはり寒く感じるのでした。
寒いよお兄ちゃんと蛍さんは言って、言ったそばからぶるっと身震いしてしまいました。
話す声も震え声になって来ます。叔父は本当に何だか姪の様子がおかしいと感じました。
大体、真夏のこの暑い時期なのに、蛍さんはきちんと布団を被っているのです。寒いというよりどう見ても布団蒸しです。
蒸し暑くて布団を跳ね返さないのが不思議なくらいです。叔父はもしかしたらと、蛍さんの足元の方の布団を捲ってみました。
「あれ?」
あれれと、彼は蛍さんの足元から水枕を取り出しました。そして反対側の足元も覗いてみて、そこからやはり水枕を取り出しました。
そこで彼は、思い切って蛍さんの布団をさっと剥がしてみると、果たして彼の目に映ったのは水枕に囲まれた蛍さんの寝間着姿でした。
「これだけ水枕に囲まれていれば、寒くもなるさ。」
そうムッとした声を上げた彼は、如何にもむすっとした機嫌の悪い顔つきに変わりました。
彼は寝台から水枕を全て取り除くと、布団も外したままで、蛍さんをよしよしと静かに落ち着かせて寝かせ、言いました。
「ホーちゃん、これで温かくなるよ。」
暑いくらいになると思うけどね。お兄ちゃん少し兄さん、というのは君のお父さんの事だけど、に話があるから、
少しここからいなくなるけど、静かに寝ているんだよ、分かったね。
そう言ってにっこり笑うと、
「黄な粉団子でも買って来てやるよ。」
そう言ってわーいと蛍さんを喜ばせると、じゃぁと言って彼は病室から出て行ったのでした。
「黄な粉団子か、早く食べたいな。」
串に刺さったおいしそうな黄色い団子を思い浮かべて、蛍さんは嬉しそうににっこりしました。
何だか本当にお腹が空いてきて、グーッとお腹の虫も鳴き出したのでした。
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