如何しようと思う間もなく父は戻って来て、その手に鉛筆を取り上げると、
「お前が書かないならこの鉛筆は要らないな。」
そう言って、部屋から出て行きました。
暫くして戻って来た父は、何だか向こうも怒っていたが、鉛筆は置いて帰って行った。
という事でした。
「要らないわ。」
私がそう言うと、父もそうだろうなと言って、向こうはお前の性格をよく知っているから未だいるかもしれないなと、
鉛筆を手に戻って行きました。
どうやら、本当に帰ったらしい。
シルバーの鉛筆を手に、父は私に如何すると聞くので、要らないから返して、如何しても置いて行くというなら、
お父さんが貰ったら、お父さんが聞いた話でしょう。
当時さっぱり訳が分からない私は、話の見えない出来事にイライラして父に八つ当たりするのでした。
この時私の脳裏に浮かんでいたのは、小学校の頃に不意に見知らぬ人に声をかけらた、
物を書く人になりなさいと私に言った見知らぬおじさんの面影でした。
『何の約束もしていないのに…』
名前さえ知らない変な人。
私には全く心当たりがないのでした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます