ああといひて吾を生みしか大寒に 矢島渚男
この人、1935・昭和10年1月24日生まれ。
生地長野県丸子町、この地方の冬の寒さを私は身をもって知っています。
子供の頃の記憶では朝起きると自分の息で布団の縁が薄く氷ついている
のでした、 住まいが良くなった現在ではあり得ないかもしれませんが。
丸子町は今では上田市の一地区になっていますので、二年先輩の同郷
の人でした。 こちらは生れは東京ですし六月ですから、この句をもって私の
「その日の俳句」ではありませんが、五・七・五によって特定のその一日を詠
み表わすとすれば詠み手にとってこの日にこの句は動かないでしょう。
昨日、日に一句なり一首を配した本から三句を紹介しました。 実は昨日
という一日を言葉にするとどう言い表せるのだろう、とすこし考えたのです
が三句を借りて代わりにしました。
ひとつの計画がとん挫し、代わりにともいえる一つの計画への準備に費
やされた一日を、報告文ではなく一日の持つ内実を言いとめておきたいと
思った時、散文ではなく韻文で適切に表現できると感じました。
自分の生活のなかに変化の必要性と可能性を見出し、その可能性を現
実のものに発展させる内部の力が言葉として出てくるとすれば、それはか
なり短いものになる(こんな風にだらだらにならない)、筈だと思うのです。