今日のタイトルは「しんぶん赤旗」の文化欄の「古書店の窓から」から
頂きました。永井荷風の『墨東綺譚』(昭和15年版)を読んでの思いが綴
られています。「本の世界に引き込まれる。荷風が生き、歩いた帝都東京
に、連れて行かれる。(略)/荷風はこの本のなかで明治維新、関東大震
災後の、江戸の風情が失われていく帝都東京のさまを嘆く。」
書き手は荷風が嘆いたこの街も大空襲によって焼き払われ、この古本
が戦火からの生き残りかと愛おしく感じ、撫でながら次のように考えていく。
「古本は単に過去のかけらなのではない。あったかもしれない無数の未来
をはらんでいるものなのだ。わたしたちは、動かしがたい必然の、今、ここ、
に生きているのではなく、さまざまな偶然が重なった、今であり、ここ、に生
きているだけでなのだと、古本は教えてくれる。
過去を手にし、過去の中にある未来を考え、わたしたちの未来を考え、わ
たしたちの今から未来を創造する。古本はそんな営みを手助けしてくれるも
のなのである。」
昨日買った古本『手記 じかたびの詩 ー失業と貧乏をのりこえて』は全日
自労一般労働組合・早船ちよ 編(1980年)、「じかたび=地下足袋」はニコヨ
ンと呼ばれた時代の父の詩でもあり、私のこれからを示すものでもあります。