昨夜の続きです。
頂いた彼の年表に1974年4月某大学土木工学科を卒業し、ある建設関連
会社に測量士補として入社、その9月東北地方のダム現場にいました。
その時詠んだ詩です、年表に紹介されていました。(行替えは変えてあります)
湖底への村 (1974年9月)
緑の山々が紅に染まる頃 沢の水に顔を押しつけて飲みこんで 最後にごくんと飲みこんで
そのまま青い空を見あげたら すすきのそばに白い線雲があったのだ しばらく見つめていたら
なんだか吸いこまれていくような気がして 立ちあがったのだ 首にまわしたタオルで顔をふき
涼しい風が通っていく感触がたのしくて そしてまた悲しそうでもあったので つったっていたのだ
ここはダムの建設現場 2 ・3年後には この沢も あのすすきも あの一本杉も みんな湖の中
あの半鐘のある火の見やぐらも そしてあの葮ぶきの大きな家も
このにある分校も みんなみんな水の中
俺はダム建設付替え道路用の測量をしているのだ
俺が長さを測るたびに 俺が角度を測るたびに 俺が杭を一本打つたびに
一つひとつ確実に 湖の底へと続いていくのだ
美しい小さな山あいの村々が どうして沈まなければならないのか
とんぼや、やまめや、沢蟹をとった あの子どもたちのふるさとは
どうして沈まなければならないのか
この失われていくものたちを 今では 俺にはどうすることもできないのだ
だから俺はこの湖底へと続く失われていくものたちを 今しっかりと見つめているのだ
怒りと悲しみをのせた この秋風とともに