kaeruのつぶやき

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一測量士の歌。

2013-11-28 18:23:13 | 詩的なつぶやき

 昨夜の続きです。

 頂いた彼の年表に1974年4月某大学土木工学科を卒業し、ある建設関連

会社に測量士補として入社、その9月東北地方のダム現場にいました。

その時詠んだ詩です、年表に紹介されていました。(行替えは変えてあります)

 

    湖底への村    (1974年9月)

 緑の山々が紅に染まる頃  沢の水に顔を押しつけて飲みこんで  最後にごくんと飲みこんで

 そのまま青い空を見あげたら  すすきのそばに白い線雲があったのだ  しばらく見つめていたら

 なんだか吸いこまれていくような気がして  立ちあがったのだ  首にまわしたタオルで顔をふき

 涼しい風が通っていく感触がたのしくて  そしてまた悲しそうでもあったので  つったっていたのだ

 

 ここはダムの建設現場  2 ・3年後には  この沢も  あのすすきも  あの一本杉も  みんな湖の中

 あの半鐘のある火の見やぐらも  そしてあの葮ぶきの大きな家も  

 このにある分校も  みんなみんな水の中

 

 俺はダム建設付替え道路用の測量をしているのだ  

 俺が長さを測るたびに  俺が角度を測るたびに  俺が杭を一本打つたびに

 一つひとつ確実に  湖の底へと続いていくのだ

 

 美しい小さな山あいの村々が  どうして沈まなければならないのか

 とんぼや、やまめや、沢蟹をとった あの子どもたちのふるさとは

 どうして沈まなければならないのか

 

 この失われていくものたちを 今では  俺にはどうすることもできないのだ

 だから俺はこの湖底へと続く失われていくものたちを  今しっかりと見つめているのだ

 怒りと悲しみをのせた この秋風とともに