kaeruのつぶやき

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『黒い福音』、作家の目ペンの力。

2014-01-17 22:01:28 | 本のひと言

 ≪本編は昭和34年3月に起こった、いわゆるスチュワーデス殺人事件に

もとづいて、著者一流の推理と解決を提示したものである。≫

 新潮文庫の『黒い福音』の「解説」はこう書き出しています。

 3月10日早朝、東京杉並区の川で女性の死体を発見、27歳の英国海外

航空の日本人スチュワーデスで他殺でした。容疑線上に残ったのがカソリッ

ク教会の神父。二、三回出頭して取り調べていた矢先、この神父が帰国して

しまいます。

≪松本氏はこの事件に深い関心を覚えた。事件の資料を収集し、犯行現場

にも出向くほどの熱意を示した。カトリック教団の壁に閉じ籠って、進んで疑惑

を晴らそうとしない閉鎖権威主義と、事件の核心に迫りながら、もう一歩の追

及のできなかった警視庁側の弱気、それは日本の国際的な立場が極めて弱

かったことに起因するのだが、この二つが氏に真相究明を促し、作品にする

ことにより、臭いものに蓋をする実態に、思いきってメスを振ったものである。≫

 この作品は、その年の11月3日号の週刊誌に掲載がはじめられ、翌年の10

月25日号まで連載されました。

 

 当時、清張の連載中の小説は、『影の地帯』、『黄色い風土』、『霧の旗』、『波の

塔』、『わるいやつら』、『球形の荒野』、『歪んだ複写ーー税務署殺人事件』、『高

校殺人事件』などでした。(『人間 ・松本清張』 福岡隆著)

 福岡隆さんに関して、辻井喬氏の『私の松本清張論』の「年表」でこう記してい

ます。

≪執筆量の限界を試してみようと思い、積極的に仕事をする。その結果、この年

(1959年・昭和34)なかば以後書痙(しょけい・字を書こうとすると手が硬直して

動かなくなる病気)にかかる。そのために原稿は口述、清書されたものに加筆す

るという方法をとり、速記者福岡隆を約9年間にわたって専属とした。≫

「辻井喬」については http://ja.wikipedia.org/wiki/堤清二

 

 辻井さんはこの本のなかで、

≪清張文学の影響は、読者に世の中の動きを分析できる力を与えること、それが

文学の社会的力であることを示しました。≫と述べておられます。

 

 19日のTV番組については http://www.tv-asahi.co.jp/fukuin/