今月のKS俳句会はメールで投句して、各自選句をするということで、
少し時間をかけて読みました。以前この句会のはじめての合同句集に
「俳句は読むものとしてはあまり面白いと思ったことはありません」と
書いたのですが、今回時間に余裕を持って読んでみると、そうとも言え
ないと感じたのです。
面白いと思う、というより面白い読み方をする、言うなれば自分勝手
に読む。句会の場合選句のあと感想を述べるのですが、詠んだ本人から
自分の句について「解説」が入って、読み手としてなかなか自分勝手な
感想ではすまないことになります。
ひとつの句にたいして、詠み手読み手各自の「解説」「感想」は各々
自立しているわけで読み手の誤解もありえます。詠み手の話を聞いて、
そういうことかと思うことも俳句の楽しみ方だと思います。
下手な前口上はこれくらいにして、今回の53句から自分の句8句を外
し45句より選句した8句と簡単な感想を記しておきます。
三葉子選 ≪鑑賞文≫
1-② 廃校の時計は時を初明り
≪ふる里の卒業した母校も廃校になっていたが、再活用の話が出て、
今年は具体化されるという。慣れた時計を目に、元旦の感慨に浸っている。≫
3-③ 千鳥啼く潮育ちの人逝きて
≪浜の村落の友人が亡くなっていた、逞しい海の男だったがやはり、という思い
を千鳥の啼き声を耳にしながら深めている。≫
4-③ 玄関に四角い鉢の福寿草
≪新年を迎える仕度の〆は、玄関にこれを置くことだと……。≫
5-① 三日はや墓誌の名入れの頼みごと
≪人の寿命に正月もない、と言って元日の厳粛さ二日の家族団欒に遠慮しての頼み
ごと、分かりましたと受ける三日。≫
6-⑤ 遭難碑寒の落暉と正対す
≪人の記憶は薄れるし、体験者がいなくなれば忘れられる。そうしてはならないと
いう思いが込められた碑を、冬の夕日に身をおいて見つめている。≫
7-③ 半切りの大根と葉のお味噌汁
≪開いた歳時記に、われもまた厨俳人大根煮る /山田弘子 という句が紹介されて いました。日常の些事をこういう形にできることを喜びとしたい、と思います。≫
9-② ねんごろに苔掃くことも年用意
≪ねんごろは掃くにかかっていると同時に年用意への気持ちの表れです。人の心も
新たになる新年への期待が「掃くことも」の「も」に込められています。≫
11-⑤ 煤逃げの男の覗く不動堂 ← 特選
≪昨日選句を済ませて、先ほどどんな句を選んだのか頭に浮かんできたのが、この
句でした。正月を挟んで一月の句会らしい一句で、俳諧の諧の字が生きる句だと
思います。≫