この頁は本の 「あとがきにかえて」 の部分です。それは凛君の母 ・ 史さん
が書かれました。
この頁の前で史さんは凜君の俳句を四句記し、説明を付け加えています。
革靴の黒光りしておらが春
凛君の中学校進学にあたり、家族の方々はいじめが尾を引くことを懸念し、
私立中学に入ります。 しかしそこでもいじめにあいます。 その時の句、
天国の雲より落ちて春の暮
史さんの言葉「この句を口にした凜の心中を思うと胸が痛かった。」
そして、転校。 「市内の公立中学校に通い、先生方の理解を得て生き生きと
学んでいる。 授業中に野鳥が飛び込んで来た日」の句、
迷い来て野鳥も授業受ける夏
「また、校庭に捨てられていた子猫が、翌日死んでいるのを見て、先生方とお墓
を作り手を合わせた。」
猫の墓師と手向けたるすみれ草
「学校生活が想像できるような凜の句に、家族は今までの心労が吹き飛んだ。」
写真の頁のなかの史さんの言葉です。
「私立中学の在籍したのは、実質三週間ほどだったが、ずっしりと重い鞄を肩に、
通勤ラッシュの電車を乗り換えて1時間半の通学は、凛にとって大きな大きなプラス
だった。体格もがっしりとし、一皮剥けたような成長だった。
吸い込まれ押し出され行き春の駅
小さく生まれ、神経をすり減らすほどに守るべき存在だった息子の手は、今や私の
肩をもんでくれる。 家族もまた、教育現場の違いを知ることができたのだ。
彼の俳句は、成長と共に変化を見せてきた。季節の移ろいや生き物を詠む自然詠
の句から、心情を詠むようになった。喜びも悲しみも、五・七・五の十七文字で 「自己
表現」 する凛は、喜びを倍に、悲しみは半減させてくれる。
心ない言葉に家族で何度も悔し涙をながしたが、今や俳句で家族に希望を与えて
くれるのだ。」
写真の終り色紙の一句は長谷川櫂さんの句です。
虫のこころ解する君に春動く
小野江小学校の一丸さんの感想文を詠み返してました。
「小さくてあまり目立たない虫の気持ちが書いてあるので、虫の気持ちになって
いるだと気づきました。」