この本は表紙にありますように俳人石田波郷を小説としてえがいたものです。ただこのなかには一句も俳句が出てきません。
書かれた詩人であり小説家の辻井喬は「あとがき」でこう書いています。
「~、作品のなかに俳句を使わないようにすることに留意した。小説というジャンルの独立性を明確にしておきたかったからである。
俳句の領域を犯さず、俳句に従属もせず俳人の生涯に題材を取った小説を書くことは思ったよりはむずかしい作業であった。俳句というのは非常に強い、アウラを発する詩型だと感じた。~」
一昨日の「つぶやき」で春嵐の例句として
春疾風屍は敢て出でゆくも
を書いて、この句の説明を記したくなって以前読んだ俳句の観賞の本をめくって見たのですが該当するものが見つかりません。
波郷が結核療養で入院中の作品で句集『惜命』のなかの一句であることは知っていたのですが、このところブログで「命」をつぶやいているので少し深めてみたいと思ったのです。
この本には俳句としては出てこないことは分かっていましたが、目をとおしてみようと思い、取り出してページをめくっているうちにかなり読み込むことになりました。こういう場面がこういう俳句として詠まれたのだろうと思うページもあり、また病身の俳人である夫を支える妻の姿が「てんがらもん」のゲストの溜さんの奥さんの姿に重なるのです。
そんなことをふくめて、全部を読み終えてから日をあらためて書いてみたいと思います。