花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

NHK-BSドキョメンタリー「疑惑のカラヴァッジョ」の番組概要(2)

2020-05-22 01:29:48 | テレビ

レオナルド・ダ・ヴィンチ《サルヴァトール・ムンディ》の落札価格500億円を予言したオークションアート商業データベース「アート・プライス」社長ティエリー・アーマンは言う。

「(トゥールーズの)カラヴァッジョが300億円で売れても不思議ではない。展覧会で100万人の入場者収入の他、貸出し料収入も見込め、8~12年で元は取れる。近年、美術館の新設が増えており、カラヴァッジョ真作を望む声が出ている。アンティーク市場は専門家の意見よりも市場の動向の意向が反映されている。」

画商テュルカンのオフィスへの来訪者は多いが撮影は拒否された。自分たちは鑑定力だけではなく、その情報が外に漏れないという絶対的信頼感で、今の地位を築けていると言う。しかし、SNSで漏れてくる情報もある。

キース・クリスチャンセン(メトロポリタン美術館主任学芸員)は彼のSNSで非公式ながら言及する。「ブレラでの展示には2度も通ったが、誰にこんな絵が描けようか?カラヴァッジョ以外の誰でもない!」

一方、反対の仮説も支持を広げていた。ルイ・フィンソン研究者のクリスティーナ・テルザーキは、2枚ともルイ・フィンソン作品と言う。 ジャンニ・パピもフィンソン説を支持し、トゥールーズ作品の方が傑作だと言う。

↑ トゥールーズのカラヴァッジョ(?)作品

↑ ナポリのルイ・フィンソン作品。

しかし、2作品を並べてみると同じ画家が描いたとは思えない。ナポリ作品は全体的に硬い印象がある。例えば、袖口のフリルの描き方では、トゥールーズ作品の方が透明で柔らかな表現である。

しかし、類似点も多い。調査では2作品ともカンヴァスは大きくするために継ぎ足しをしており、2枚のカンヴァスの継ぎ目の位置は同じで、上下の異なる織り目も同じである。最初から複製を念頭に2枚用意したと思われる。

テルザーキは言う。「カラヴァッジョのウィーン美術史美術館《ゴリアテの首を持つダヴィデ》の調査では、絵具の下から別の作品の素描が発見され、フィンソンのものと推定される。当時フィンソン工房にカラヴァッジョが出入りをしていたと思われる。」

↑ カラヴァッジョ《ゴリアテの首を持つダヴィデ》(1607年)ウィーン美術史美術館

※(花耀亭:註)ウィーンのダヴィデが「カラヴァッジョとカラヴァッジョ派作品」になった関連であろうか??

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/231f60ee2143c9b89f29a3be0611b461

クラウディオ・ファルクッチ(物理学者)はトゥールズ作品を様々な方法で調査した。X線・赤外線・蛍光分析で。X線では老女の肩の線がユディットのベールの下まで描かれており、模写ならベールに肩の線は隠れるので描かない。構図を考えながら描いているので、複写作品ではない。

しかし、謎はまだある。侍女アブラの強調された皺もだ。老女アブラの皺の破片を調べると、完全に乾いた絵具の上に更に塗ってあることがわかった。また、この老女の喉には甲状腺病の腫れがある。この病気は眼球が大きく出てしまう。下絵ではグロテスクに大きく目を剥いている。しかし、侍女アブラの顔は描き直されている。 

では、誰が? ニコラ・スピノザ(元カポディモンテ美術館長)は言う。「17~19世紀に修復されたのこましれない。が、個人的にはヴァッジョの未完成作品にフィンソンが加筆したのだと思う。」

仮説とは言え信憑性がある。このように鑑定されている絵は他にない。画商たちが付けた売値はますます無謀に見えてくる。

テュルカンは言う。「美術品の鑑定は客観性とは程遠い領域だ。私たちが売るのは愛や夢である。ダ・ヴィンチに500億円の値をつけるのはそれだけの愛を感じたのだ。」

ということで、続く