さて、前回の講演会(1)で端折ったところがある。それは、モレッリもロンギも困難であるはずの、特定の画家の「初期作品」の再構成に乗り出した話だ。様式確立後の作品ならば鑑定はしやすいだろうけどね。
「フェルメール展」の感想でも書いたことがあるが、画家の初期割作品には師やリスペクトする先人の影響が色濃く出やすい。岡田先生も例に挙げていらっしゃったが、初期のラファエッロ作品に師ペルジーノの影響が強く現れていることはよく知られている。私もトジオ・マルティネンゴやカッラーラ絵画館で「あれっ!」と思ったことがある。
目利き二人は、最盛期の画家のスタイル確立までの活動を、その初期作品から再構成してみようとするのだ。
興味深いことに、講演会でモレッリがパルマ派のコレッジョ(1489頃-1534)の初期作品と鑑定した画像が紹介された。右の天使の顔が暈した陰影に包まれていることにモレッリは注目する。すなわち、コレッジョはヴェネツィアに行き、ジョルジョーネの影響を受けたのではないか、と。
コレッジョ《聖母子と天使》)ウフィッツィ美術館
わぉっ!確かに対向右の天使はジョルジョーネ風なのだ!!
パルマでの「コレッジョ展」を観て、初期のコレッジョはマンテーニャやレオナルドの影響を受けたことは知っていたが、なんと、ジョルジョーネもだったのね(・・;)
ジョルジョーネ《羊飼いの礼拝》(部分)(1505-10)ワシントン・ナショナル・ギャラリー
モレッリの意外な推理に、今まで難解そうで距離を置いていたジョルジョーネを、もっと勉強しなくちゃ、と思うようになった。なにしろ映画「カラヴァッジョ」でもジョルジョーネの影響云々言われていたのだしね(^^;
ジョルジョーネ作品を良く観れば、その様式的革新性と言われる「フスマート(暈し)」「色彩の甘美さと優美さ」「柔らかい統一性」「人物に恐るべき生動感を与える薄暗闇」が了解される。
さらに、思うのだが、師ジョヴァンニ・ベッリーニの風景と大気への優れた感受性に共感し、一番強く受け継いだのはジョルジョーネなのかもしれない。《テンペスタ(嵐)》や《羊飼いの礼拝》(ワシントン)など観るとそう感じてしまう。
《羊飼いの礼拝》(1505-10)ワシントン・ナショナル・ギャラリー
ちなみに、去年、久しぶりで再々訪問したドーリア・パンフィーリの《エジプト逃避途中の休憩》。
カラヴァッジョ《エジプト逃避途中の休息》(1596-97)ドーリア・パンフィーリ美術館
カラヴァッジョには珍しく背景が描きこんであり(《イサクの犠牲》もだが)、色彩豊かなで、甘美な情感漂う作品である。後ろ向きの天使のS字型ポーズはマニエリズムの影響とも言われる。今まで漠然とヴェネツィア派の影響だと思っていたが、今回の講演会での画像紹介を見ながら、もしかしてジョルジョーネからの影響とも思えてきたのだ。
それに、「人物に恐るべき生動感を与える薄暗闇」にもカラヴァッジョへと通じるものを感じたのだよね。描かれた人物の瞑想的雰囲気や特に薄暗闇に浮かぶところなど、もしかしてと思い始めた。まぁ、何でもカラヴァッジョに結び付けたくなる性分だから、美術ド素人の誤解だったらお許しあれ(^_^;)
ジョルジョーネ《自画像》ヘルツォーク・アントン=ウルリッヒ美術館
そんなこんなで、ジョルジョーネについてあれこれ調べていたら、そこに偶然、ボローニャのFさんから、カステルフランコ・ヴェネト「GIORGIONE2010」展情報を頂いた。
こちらの展覧会についても、ぜひブログで扱ってみたいと思うのだけど、書けるかなぁ(^^;;
さて、講演会に話は戻るけど、講演会の最後に受講者からの質問コーナーがあり、なかなか面白い質問が出ていた。中でも、おおっ、と会場がどよめいたのは、モレッリが神話画中心の鑑定が多い理由!北イタリア出身のモレッリではあるが、何と珍しくもプロテスタントだったから!!
思わず、オランダにおけるユトレヒト派に想いを馳せてしまったのだった(^^ゞ
「フェルメール展」の感想でも書いたことがあるが、画家の初期割作品には師やリスペクトする先人の影響が色濃く出やすい。岡田先生も例に挙げていらっしゃったが、初期のラファエッロ作品に師ペルジーノの影響が強く現れていることはよく知られている。私もトジオ・マルティネンゴやカッラーラ絵画館で「あれっ!」と思ったことがある。
目利き二人は、最盛期の画家のスタイル確立までの活動を、その初期作品から再構成してみようとするのだ。
興味深いことに、講演会でモレッリがパルマ派のコレッジョ(1489頃-1534)の初期作品と鑑定した画像が紹介された。右の天使の顔が暈した陰影に包まれていることにモレッリは注目する。すなわち、コレッジョはヴェネツィアに行き、ジョルジョーネの影響を受けたのではないか、と。
コレッジョ《聖母子と天使》)ウフィッツィ美術館
わぉっ!確かに対向右の天使はジョルジョーネ風なのだ!!
パルマでの「コレッジョ展」を観て、初期のコレッジョはマンテーニャやレオナルドの影響を受けたことは知っていたが、なんと、ジョルジョーネもだったのね(・・;)
ジョルジョーネ《羊飼いの礼拝》(部分)(1505-10)ワシントン・ナショナル・ギャラリー
モレッリの意外な推理に、今まで難解そうで距離を置いていたジョルジョーネを、もっと勉強しなくちゃ、と思うようになった。なにしろ映画「カラヴァッジョ」でもジョルジョーネの影響云々言われていたのだしね(^^;
ジョルジョーネ作品を良く観れば、その様式的革新性と言われる「フスマート(暈し)」「色彩の甘美さと優美さ」「柔らかい統一性」「人物に恐るべき生動感を与える薄暗闇」が了解される。
さらに、思うのだが、師ジョヴァンニ・ベッリーニの風景と大気への優れた感受性に共感し、一番強く受け継いだのはジョルジョーネなのかもしれない。《テンペスタ(嵐)》や《羊飼いの礼拝》(ワシントン)など観るとそう感じてしまう。
《羊飼いの礼拝》(1505-10)ワシントン・ナショナル・ギャラリー
ちなみに、去年、久しぶりで再々訪問したドーリア・パンフィーリの《エジプト逃避途中の休憩》。
カラヴァッジョ《エジプト逃避途中の休息》(1596-97)ドーリア・パンフィーリ美術館
カラヴァッジョには珍しく背景が描きこんであり(《イサクの犠牲》もだが)、色彩豊かなで、甘美な情感漂う作品である。後ろ向きの天使のS字型ポーズはマニエリズムの影響とも言われる。今まで漠然とヴェネツィア派の影響だと思っていたが、今回の講演会での画像紹介を見ながら、もしかしてジョルジョーネからの影響とも思えてきたのだ。
それに、「人物に恐るべき生動感を与える薄暗闇」にもカラヴァッジョへと通じるものを感じたのだよね。描かれた人物の瞑想的雰囲気や特に薄暗闇に浮かぶところなど、もしかしてと思い始めた。まぁ、何でもカラヴァッジョに結び付けたくなる性分だから、美術ド素人の誤解だったらお許しあれ(^_^;)
ジョルジョーネ《自画像》ヘルツォーク・アントン=ウルリッヒ美術館
そんなこんなで、ジョルジョーネについてあれこれ調べていたら、そこに偶然、ボローニャのFさんから、カステルフランコ・ヴェネト「GIORGIONE2010」展情報を頂いた。
こちらの展覧会についても、ぜひブログで扱ってみたいと思うのだけど、書けるかなぁ(^^;;
さて、講演会に話は戻るけど、講演会の最後に受講者からの質問コーナーがあり、なかなか面白い質問が出ていた。中でも、おおっ、と会場がどよめいたのは、モレッリが神話画中心の鑑定が多い理由!北イタリア出身のモレッリではあるが、何と珍しくもプロテスタントだったから!!
思わず、オランダにおけるユトレヒト派に想いを馳せてしまったのだった(^^ゞ
で、ジョルジョーネ展は私も行けないのですよ(涙)。展覧会資料をFさんに頂き、興味深い内容だったので、近いうちにぜひ紹介したいと思います。
Cojicoさんやご友人と将に同じで、私もあの頃のヴェネツィア派絵画が大好きです。なかでも、やはりベッリーニは素晴らしいですよね!本当に静謐な画面に惹き込まれてしまいます。
それから、Cojicoさん、コレッジョもぜひご覧になってくださいね。
で、リベーラも良いですよね!あの強烈なリアリズム。スペインのリベーラやバロック画家たちの展覧会、ぜひ私も観てみたいです!!カポディモンテ美術館展にリベーラ作品も来てくれることを期待しているのですがね。
絵の詳しい友人が、ヴェネトでのジョルジョーネ展の話をしていました。早く亡くなり、作品数が少ないので、貴重な展覧会なのでしょうね。
その友人も私も(花耀亭さんもそうだと思いますが)ですが、アントネッロ・ダ・メッシーナからジョヴァンニ・ベッリーニ、そしてジョルジョーネに至る絵を気に入っています。特に前者2人の純粋な敬虔さを示している絵は、静かでほんとに美しいと思います。
それに磨きをかけたのがジョルジョーネ!残念ですが、私は行けません。
コレッジョはほんとに勉強熱心な画家だったのですね。私ももっとコレッジョを見てみたいです。
そして、今回のボルゲーゼ展を見て思ったのですが、”リベーラ展”というのは、開催できないものなのでしょうか?スペインンの美術館からの展覧会も見てみたいです(ピカソではなくて)。
いやはや、okiさん、凄いですねぇ(・・;)。おかげでボルゲーゼ展を何度も堪能できそうです(^^)v
で、今回の図録は読み応えがあって嬉しいですね。作品紹介だけの図録よりも勉強になります。
ジョルジョーネについては画集的なものがあまり無いので驚きました。私は付け焼刃で、小学館「世界美術大全集13(イタリアルネサンス3)」(1994年)を参考にしました。東京書籍のイタリア・ルネサンス・シリーズにも入っていないのが意外です。
で、ちょっと調べたら...
・「ジョルジョーネ・ティツィアーノ」(カンヴァス世界の大画集」中央公論社(1984年)
・「絵画の発明-ジョルジョーネ「嵐」解説」サルヴァトーレ・セッティス・著/晶文社(2002年)
・「ジョルジョーネ解読」エドガー・ヴィント・著/中央公論美術出版社(2009年)
多分、もっとあるのかも知れません。ヴェネツィア派関連だったら、必ずジョルジョーネは登場するはずです。
さて、okiさんにもカラヴァッジョの凄さを認めていただけたようで嬉しいです。あ、宮下先生の「カラヴァッジョ巡礼」も読みましたよ♪
私は《洗礼者聖ヨハネ》の前で画家に対する痛々しさを感じてしまいました。《聖ウルスラの殉教》と何か通じるものを覚えます。
ただ今回の図録、よむところが異様に多く、全部読み切れていません。
音声ガイドを借りたのですが、ジョルジョーネという人の影響はやはり大きいなと。ジョルジョーネという画家を知らないのですが、日本語でよめる参考文献ありましたら、教えてください。
カラヴァッジョのヨハネ、神々しかったですよ。