多分、私は屏風絵が好きなのだと思う。やはり、今回の東博常設展示で一番目が惹かれたのも《花車図屏風》だった。四季の花々もだが、螺鈿蒔絵の車の漆黒が金地に実に映える。
《花車図屏風(6曲1双)》右隻(江戸時代・17世紀)東京国立博物館
《花車図屏風(6曲1双)》左隻(江戸時代・17世紀)東京国立博物館
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0009745
「絢爛に金で装飾された花車(花見の車ともいいます)5輛それぞれに藤、牡丹、杜若、紫陽花、菊など、四季の花々を載せています。花車図は江戸時代はじめ、大名家の間で人気のあったモティーフで、主に狩野派の絵師たちによって描かれました。」(colbaseサイトより)
《花車図屏風(6曲1双)》右隻 一部拡大
咲き乱れる季節の切り花の数々が四季それぞれの花車に、それも螺鈿蒔絵の車なのだ!! 近寄って見てみると、本当に螺鈿細工が散りばめられた蒔絵として描かれていることがよくわかる。もしかして、昔の車(花車)には実際に蒔絵装飾が施されていたのかもしれない。東博には豪華な螺鈿や高蒔絵の鞍も展示されているが、車も一種の乗り物と見れば、装飾の美々しさを競う当時の心意気みたいなものが偲ばれる。
で、面白いのは、同じ17世紀、欧州でも花卉画が流行をみせているが、そこにはヴァニタス的意味合いが多分に含まれている。しかし、この日本の花車図は四季の花々と装飾デザインの豪華さをただただ愛でる風流趣味(大名趣味?)のように思えるのだ。
いずれにせよ、美しいものを見るのは目の喜びだよね。