遅ればせながら、九州国立博物館「生誕270年 長沢芦雪-若冲、応挙につづく天才画家」展を観た感想をサクッと書きたい。(展覧会チケットに感謝です!!>山科さん)
https://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s71.html
※出品目録:https://www.kyuhaku.jp/exhibition/img/s_71/exhibition_s71.pdf
事前にゲストの山科さんから、後期展示では芦雪作品だけでなく若冲《象と鯨図屏風》も展示されるとの情報を頂いていたが、やはり福岡行きの主目的は「ローマ展」のカラヴァッジョだったから、泣く泣く前期展示を観ることとなった。どうみても後期の方が見応えありそうな内容なのだよね。
とは言え、久しぶりに芦雪の躍動感溢れる大画面作品を色々と観ることができたし、更に最後の章では当時の京都画壇の充実ぶりに想いを馳せてしまった。
もちろん、長沢芦雪(1754-1799年)は辻惟雄先生の「奇想の系譜」でも挙げられた奇想の画家として有名ではあるが、私的に師匠の丸山応挙(1733-1795年)が元々好きなので、大胆な作風の芦雪が応挙の高弟という意外性が好もしい。
長沢芦鳳《長沢芦雪像》(江戸時代 18世紀)千葉市美術館
今回の前期展示で、一際目が吸い寄せられたのは無量寺の《虎図襖》ではあった。観者の眼前に飛び込んで来るような迫力の大画面である。
長沢芦雪《虎図襖》(1786年 天明6年)和歌山 無量寺
が、以前にも観ているので、私的に面白く観たのは西光寺《龍図襖》だった。
長沢芦雪《龍図襖》(江戸時代 18世紀)島根 西光寺
何というか、もちろん勇壮な龍ではあるのだが、襖に収まるように無理やり身体を(特に尻尾部分!)丸め曲げてみましたぁ~的な、大胆な筆致と墨筆の淡さと掠れ具合も相まって、ユーモラスな風情を感じてしまったのだ。
で、嬉しいことに芦雪は師匠応挙の仔犬の愛らしさも引き継いでいる。
長沢芦雪《布袋・雀・犬図》(江戸時代 18世紀)和歌山 無量寺
長沢芦雪《仔犬図屏風》(江戸時代 18世紀)江戸千家・蔵
それで、久々に思い出したのだ。ロサンゼルスのカウンティ美術館で観た丸山応挙《Puppies among Bamboo in Snow》を。やはり仔犬もより写実的なのである。
丸山応挙《雪竹仔犬図屏風(勝手な和訳です), Puppies among Bamboo in Snow》左隻(1784年)カウンティ美術館(ロサンゼルス)
丸山応挙《雪竹仔犬図屏風( Puppies among Bamboo in Snow)》左隻一部拡大
ご参考:https://collections.lacma.org/node/2266592
ということで、今回の生誕270年記念展覧会でも、長沢芦雪の画家としての力量は美術ド素人の私も了解することができた。でも、やはり好きなのは師匠の丸山応挙の方だなぁと思う(ごめんね) 。なにしろ、出会いが上野で観た《氷図屏風》(大英博物館)だったのだから...。
で、恥ずかしながら(読み方も)知りませんでした(^^;;>墨痕淋漓
「墨痕淋漓(ぼっこんりんり)」を調べたら「 墨で表現したものが生き生きとしているさま。筆の跡がみずみずしいさま。」とありました。芦雪の虎は確かに瑞々しい筆さばきですよね。
李方庸《風竹図》 もネットでチェックしました(汗)。竹の葉の勢いのある筆致が印象的でした。
おっしゃる通り、水墨画も絵画の筆致も、生で観ないとわからないものがありますよね。
芦雪は躍動感のある大胆な構図が魅力ですが、やはり巧みな筆致を見ていると上手い画家だなぁと思いますね。