私がたった1回のイタリアを中心にしたヨーロッパ旅行の次に行きたい国はずっとスペインもしくは北欧、スペインならグラナダだった。
ホセ・カレーラスの音楽に惹かれるのもスペイン(彼はカタロニア)だからか?
日曜美術館のアートシーンでやっていた孤高の画家戸嶋靖昌に興味を持って、時間ができたら行ってみたいと思っていた。
Sも行ってみたいというので、麻布十番で食事をして、六本木まで歩いてスペイン大使館まで歩いてみることにした。
始めて通る坂を登ったり下りたりしながら、いい散歩になった。
「スペインを愛した異色の日本人画家を紹介する「孤高のリアリズム-戸嶋靖昌の芸術」展が、
港区六本木の駐日スペイン大使館で開催されている。
暗色を塗り重ねた底から、確かな命の存在を響かせる人物像。塔がそびえるグラナダの空に浮かぶ悲しみ。
繰り返し描いたメンブリージョ(カリンの実)があらわす生命の変容-。人間存在の本源に迫る
作品約100点(期間中展示替えあり)が展示されている。」
最初見たときは、ちょっとルオーっぽい感じがしたけど、そうでもなかった。人物はレンブラントにも
似たような感じだった。静かな宗教音楽が流れるスペイン大使館の入口近くのホールにたくさん
展示してあった。色が少なくほとんどが茶色。人物も男とか女ではなく人間そのもの。秋の自然でも
枯葉に埋もれてその中から生命が生まれてきそうなそんな感じ。人物も目が暗く奥から光り、
まるでその人が生きてきた今までの苦労を表しているかのよう。
絵画なのに、キャンバスから人や形を掘り出しているようなそんな絵でした。彫刻も少しあった
けれどとてもよかった。絵の方は人物でも目が死んでいるような人もいて、すごく暗かった。佐伯祐三とか
ゴッホみたいに格闘型の絵で、見ていて苦しくなるような絵でした。
モチーフは人間、自然、街、かりんでその暗い色調が一貫していた。それを見ていたら、まだすごく若い頃、
中学の同級生の個展に行って、その絵が木の根っこが絡まっている暗い色調の絵ばっかりだった
ことを思い出していた。あの若さでこういう絵を描くのかと。色は暗かったけど、でも木の根という
命の根源を描いていたので、エネルギーを感じていたけれど。
戸嶋靖昌の絵を見に行こうと思った時、森有正の若い頃に読んだ本「バビロンの流れのほとりにて」を
取り出してみていた。
フランスからスペインに行った時のその芸術性の違いに触れているところがずっと心に残って
いたけどどこだったか探してみたりした。
「スペインでは魂あるいは精神が感覚そのものとなって、感覚の中にしみ通っているのだ。それは
感覚と化した精神の美しさなのだ。グレコの絵の美しさはそこにある。スペインの音楽やダンスの
美しさがそこにある。」
フランスやイタリア絵画ともはっきり違うスペイン絵画。展覧会などで見ていてもスペインの
絵はもっと根源的な感じがする。何かそぎ取られたようなそんな感じ。いろいろな国の絵が
混ざっていると特に対照的に感じてしまいます。
近くにいらしたら、立ち寄ることをお勧めします。無料でゆったり絵を見ることができます。
アークヒルズのイルミネーションもきれいです。
Nov. 24 2015 Roppongi