連休の終わりのころ、5月7,8日で図書館から借りていたケン・ローチ監督の「麦の穂を揺らす風」と録画していた「私はダニエル・ブレイク」を続けて見ました。
『麦の穂をゆらす風』などのケン・ローチ監督作!映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』予告編
この映画は見に行きたいと思っていた映画です。麦の穂も封切られた時注目の映画ででした。TVでやっていたので、録画していましたが、なかなか見れなかった映画です。身近でとてもよくわかる映画でした。役所の融通のきかない態度も日本と同じだと思いました。お役所仕事というのが海外でも同じだったのでした。最近内容を知ったホームレスの事件にも共通することです。今では生理用品に困る若い人がいるということもニュースになり、貧困が広がっています。人間の尊厳を求め、守ろうとしたダニエル・ブレイク・・あっけないエンディングに涙が出ました。麦の穂の方は悲惨すぎて涙も出ませんでした。
2017-03-14 ケン・ローチ カンヌ受賞作に込めた“怒り” 「わたしは、ダニエル・ブレイク」
The Wind That Shakes The Barley - Official Film Trailer
イギリスという国の不思議な成り立ちを思う。 正式国名:United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)通称: イギリス 日本語では英国というけれど今でも北アイルランドの一部を取り込む国。英語ではUK。Englandというと4つのcountry England, Scotland, Wales, Irelandのうちの1つの意味があります。もともと別の王国だったものが連合してアイルランドの一部もそうなったということです。近くの国まで植民地化していたのですね。
今スコットランドの独立が時々頭をもたげてきますが、もともとは別の国です。社会保障の行き届いていた国と言われた英国も、海外の植民地などの富を蓄えた結果なのですね。
アイルランドの歴史と言えば、もっと複雑で対英国から内戦へと発展して同じ民族同士で戦いました。学生時代のころ宗教で対立したことはよく覚えていることです。映画の背景はずっと古くイギリスとアイルランドが条約を結んだ1920年代の話です。「愛するものを奪われる悲劇を、なぜ人は繰り返すのだろう。」タイトルの「麦の穂をゆらす風」はアイルランドの歌から とられている。ボブ・ディランの「風に吹かれて」を思わせる曲。人間はどれだけの年月を必要とするのだろう、愚かなことをやめるまで。今この時でもパレスチナでは報復が繰り返され、ミャンマーはどうなっているのだろう。普通の人たちの生活が奪われていく・・ この映画の主人公も愛する人と家庭を築き、医者として人の命を救う生活をしていたはずだった。普通の生活を捨てて、自由の為に命をかけて戦う・・ まるでドキュメンタリーのような淡々として描かれた映画でした。命の尊厳を奪われていく人たち。見ていてつらくなるような映画でした。
追記)
黒沢監督のインタヴューを思い出して・・
歴史を描いた映画として、見ていて黒沢清監督の「スパイの妻」を連想させるものがありました。「スパイの妻」の方はリアリティをふまえながら完全なフィクションでまずはエンターテインメントとして作ったということです。黒沢監督を以前クローズアップ現代をやっていた国谷さんがインタヴューした番組を見かえしてみました。以下メモです。
エンターテインメントを目的で作ったけれど、初めての歴史もので、その時代に触れる、戦争に触れることが大きな目的でもあったとのことです。軍人とかではなく、一般市民が戦争の被害者ではなく、加害者としての立場を市民の目から描く。関係ないと思っても関係してしまっているかもしれない、社会と個人の関係。国家と個人を意識させる映画。
映画で警鐘を鳴らしたり、告発する目的ではじぶんは作っていない。社会と個人の関係がより明確に描けるこの時代を選んだ。
妻に焦点を当てて、思い入れが強かったと思うけれど聡子を通して言いたかったことは?という質問には少し考えて答えていました。→ 男性は建前にそって生きようとしているが、女性は大義とか理屈では生きていない、心の内側から湧き起るものに従って、システムの中にいながら自分は自分という強さにあこがれを感じる。
このことは私が母の晩年に父と対比して感じていたことと同じでした。父は理屈の人でしたが、母にもっと大きなものを感じるようになりました。女性の持つ柔軟性のようなものでしょうか・・母のすごさを感じたのは晩年になってからでした。