2012年の「日本民間放送連盟賞」が発表されました。
私が審査員を務めているのは、この中の「放送と公共性」という部門
です。
今年の入選・事績は、次の通りでした。
おめでとうございます。
民放連賞「放送と公共性 」
最優秀
<テレビ信州> 武道必修化による柔道事故について
武道必修化で柔道が中学校の授業に採用されるなか、テレビ信州は、柔道教室での事故の取材をきっかけに、柔道による子供たちの重大事故が他のスポーツに比べて突出して多く、その事実がほとんど知られていないことを明らかにした。2010年からニュースで報道を続け、さらに全国放送を含む3つの番組を制作、フランスの取材も交えながら柔道事故の実態と安全対策の必要性を訴え続けた。武道必修化の問題は全国的に認知されるようになり、文部科学省は必修化直前に安全管理徹底の通達を出した。自ら問題を発掘し多角的な視点から地道な取材を続けてきたこと、また、長野県だけでなく全国に発信し、社会を動かす成果を残したことが高く評価された。
優 秀
<エフエム仙台> Date fm Hope for MIYAGI
エフエム仙台は、震災直後から1年続けてきた「Pray for MIYAGI」という復興支援キャンペーンを一歩踏み出すための震災復興応援プロジェクト「Date fm Hope for MIYAGI」として本年3月に改めてスタートした。ラジオカーが県内に13局あるすべてのコミュニティFM・臨時災害FMをまわり、放送関係者の活動や被災地の今を伝えた。同社は、現在もコミュニティFMなどと取材等で交流を続けている。県域のFM局がコミュニティーFMと日常的に連携するという取り組みが、これからのラジオ局のひとつのあり方を示すものと評価された。
優 秀
<静岡第一テレビ> SDTビデオリポータークラブ設立30周年
県内のアマチュアビデオカメラマンで作る組織「SDTビデオリポータークラブ」は、昨年設立30周年を迎えた。静岡第一テレビは、「地域の情報はその地元の人の手で発信を」との趣旨から、会員の投稿作品を放送しており、放送された作品に編集担当スタッフがアドバイスを添付して返却するなど、映像文化の向上にも一役買っている。また、地元の話題の放送は、各自治体から「街おこし、村おこし」の一助になると感謝されている。多くの局が同じような活動を試みる中、静岡第一テレビが地道な活動を長年継続しているのは、会社をあげて取り組んできた結果と評価された。
優 秀
<朝日放送> 「古文書が語る巨大津波」シリーズと一連の報道
活動
先人が遺した貴重な教訓である古文書の記述と地質学を融合することで、過去の地震の実像をあぶり出す。朝日放送で東日本大震災直後のニュース企画からスタートした一連の番組は、「地質考古学」という新しい学問分野に光を当て、日本の歴史が大災害とともにあることを訴えた。地元大阪の歴史博物館での特別展示に番組提供した。制作者の視点が明快で、あまり知られていない事例をアニメやCGでわかりやすく伝えており、人々に訴える力をもつキャンペーンと評価された。あいまいな点を正直に視聴者に開陳していることも高評価につながった。
優 秀
<福岡放送> STOP!!飲酒運転キャンペーン
繰り返される飲酒運転に対し、福岡放送では、飲酒運転関連の報道に継続的に取り組んできた。ニュースでの放送回数は500回を超え、それらをまとめたドキュメンタリー番組を3本制作。これらのキャンペーンの結果、遺族などによる飲酒運転撲滅の活動は広がりをみせ、福岡県では全国初の罰則を盛り込んだ条例が成立、事故件数が減少した。また、同社の番組は高校の授業の教材としても活用されている。制作者が放送の力を信じて追及している姿、毎日続けるという継続の力、それが成果を生んでいることが評価された。