『パナ』のCM拒否
テレビ業界の旧すぎる「体質」
「民放が横並びで特定の製品を拒否するというのは、前代未聞です。テレビ局にはユーザー・ファーストという概念がないのでしょうか」(メディア業界に詳しい上智大学の碓井広義教授)
パナソニックが発売した「スマートビエラ」シリーズのCM放映を民放各局が拒否したことが明らかになった。
同製品は電源を入れると放送番組と一緒にウエブサイトなどが画面に表示される新型テレビだが、これが「テレビの起動時にはテレビ映像を画面全体に表示するのが望ましい」という業界のガイドラインに反するというのが民放側の言い分だ。
この点についてスマートテレビに詳しいジャーナリストの西田宗千佳氏が解説する。
「放送局側としては、『テレビ番組とインターネットの情報が同時に流れれば視聴者が混同する』というわけですが、実際に混同するかと言えば、しないですよね。これでは一般の視聴者からの理解は得られないのではないかと思います。また、パナソニックにとっては寝耳に水でしょう」
実際、当のパナソニック側も困惑を隠せずにいる。同社関係者はこう嘆息してみせた。
「発売直後の大事な時期にCMを流せないのは痛いですよ。ガイドラインにあるのは、”望ましい”という曖昧な表現で解釈も分かれます。仮に『スマートビエラ』が”望ましくないことができる商品”だとしても、違反しているというのはちょっと厳しいというのが正直なところです・・・・」
大広告主に対して与えられた前代未聞の対応。この背景に、テレビ局側が持つ驕りとネットへの危機感を指摘するのは、前出の碓井教授だ。
「テレビが『娯楽の王様』だった昔とは状況が全く違います。いまやネットを含むメディア全体の〝ワン・オブ・ゼム〟に過ぎないわけで、テレビ局は自らの立ち位置についての自覚がない。
同時に、スマートテレビの登場で同じ土俵(画面)に並んだ際、ネットに視聴者を奪われないかという不安があるのだと思います。
でもスマートテレビの台頭は、家電であるテレビにとって必然の流れなんです。それをテレビ局がメーカーと一緒に後押ししないで、どうやって今後生き残っていくのか。このままでは、自分で自分の首を絞めることになりかねません」
旧い体質を引きずったままのテレビ局。かつての娯楽の王様は、どうやら「老害」になりつつある。
(週刊現代 2013.07.27/8.03号)