平昌五輪の影の主役は松岡修造?
「“言葉力”がすご過ぎ」と注目
「“言葉力”がすご過ぎ」と注目
元プロテニス選手の松岡修造の「“言葉力”がすごすぎる」と話題になっている。
1月24日に東京都・大田区総合体育館で開かれた、平昌オリンピック日本選手団の壮行会イベントで、松岡はフリーキャスターの平井理央、タレントの小島瑠璃子と共に登場した。会場には都内の小学生、長野県の小学生など約5千人が、オリンピック選手たちの勇姿を見に集まった。
イベント冒頭から松岡節が全開だった。選手が入場する前、松岡ら3人が会場に登場したのだが、その瞬間の声援と熱気が足りないと感じるや、松岡は「ちょっ!ちょっ!待って!今日はすごい重要な日なんだよ!『頑張れ!』と言ったら『ニッポン!』と(会場の)皆が言わなければ始まらないんだよ!もう一度やり直す」と会場入り口に走って戻り、わざわざ登場し直すというまさの展開。ただ、今度は会場中から「ニッポン!」という元気な声を引き出した。
さらにこんなシーンがあった。イベントが押していたこともあり、選手たちへのエールの練習をする時間が、当初の20分からわずか6分に短縮された。
そんな状況の中、松岡は多くの小学生たちを相手に、振り付けと「冬を!燃やせ!頑張れ!ニッポン!」という掛け声を覚えさせる必要があった。しかし、そこでも松岡はすごかった。子供達にもわかりやすく、短い言葉で説明し「思ったより皆できる!」「素晴らしい!」「皆にとってのオリンピック本番と思ってやって!」「皆だったら(練習)1回できるぞ!」と力強く声をかけ続け、最後には会場内が一体となって見事に揃っていた。その間わずか6分。その後の本番では、会場が一体となって、現れた選手たちに盛大なエールを送った。
約5千人を短時間でまとめた、松岡の言葉力。本能のなせる業なのか、計算づくなのか。
松岡修造の言葉に着目した日めくりカレンダー「(日めくり)まいにち、修造!」などを発売してるPHP研究所の制作担当者は、松岡の言葉力についてこう話す。
「松岡さんと商品を作る際に何度も打ち合わせしましたが、伝える言葉一つ一つを考えられています。話す言葉を自室で何度もシミュレーションされ、こういうスピードなら伝わるとか理論的です」
また、松岡が主催する子供向けテニス塾「修造チャレンジ」の影響も指摘する。
「子供たちにテニスの指導する時に、いかに子供たちにわかりやすく、心に伝えるかを大切にされています」(前出の制作担当者)
そして、松岡の言葉の選び方にも驚かされたという。
「人が傷つく言葉を選ばないように徹底されています。例えば、『家族』を思い起こさせる言葉を使うとすると、もしかしたら両親が離婚していたりする子供もいて、暗い気持ちにさせてしまうかもしれない」
ここまで考え抜かれているとは正直、驚きだった。
メディア文化論が専門の上智大学教授の碓井広義さんは、こう指摘する。
「既にテニス選手としてのキャリア、引退後もタレントとして活躍されていましたが、注目されたきっかけは、松岡さんのテニス教室の映像がテレビで結構流れた時ではないでしょうか。子供たち相手に真剣にぶつかっていく姿に、メディアが“松岡修造”という逸材を再発見したんだと思います。ゲストや司会というプレイヤーとして立つ時の“松岡修造”を」
碓井さんは同時に松岡の持つ品にも注目した。
「東宝の元社長の父親と宝塚歌劇団のスターだった母親を持ち、ある種、究極のお坊ちゃんですが、嫌味がない。品がある。一般大衆は金持ちの嫌味な部分が少しでもあれば敏感に反応するのですが、松岡さんにはそれがない。逆に子供たちに厳しい言葉を浴びせようが、消せない品の良さを感じさせる。そして、松岡修造がここにいるという贅沢感が生まれていて、今は旬の人になってます」
松岡は平昌オリンピック・パラリンピックが近いこともあるが、関連イベントに引っ張りだこ。壮行会と同日に行われたWOWOWのパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」のイベントでも俳優・西島秀俊らと登場して、西島に鋭い質問をして場を盛り上げた。
2月に開幕する平昌五輪。これからますます、松岡修造の熱い言葉がお茶の間に届くに違いない。【本誌 大塚淳史】
(週刊朝日オンライン 2018.1.27)