碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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週刊朝日オンラインで、「フジテレビ」について解説

2018年01月30日 | メディアでのコメント・論評

 


深キョン、亀梨、芳根京子ら“討死” 
どうにも止まらないフジテレビの8ブランド低下


フジテレビの低迷はいつまで続くのか--。

芳根京子主演の月9ドラマ「海月姫」は、初回視聴率8.6%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)の月9史上ワースト2位でのスタート。1月22日放送の2話は、6.9%にさらに下降した。火曜放送の亀梨和也主演「FINAL CUT」も23日放送の第3話が6.5%、深田恭子の「隣の家族は青く見える」は18日放送の初回視聴率が7.0%で、25日放送の第2話視聴率はさらに下がって6.2%になるなど、のきなみ苦戦中。今年に入っても復権の兆しは見えてこない。

「もちろん芳根さんはいい女優さんですし、『FINAL CUT』も骨太でいい作品。しかし、たとえ内容が面白くても、チャンネルを合わせてもらえない。そこに困っている状況だと思います」

と、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は語る。


ドラマばかりではなく、1月からスタートした、山崎育三郎がMCをつとめるバラエティー「世界の村のどエライさん」は、22日放送の第2回でわずか3.3%の大苦戦を強いられている。もはや内容うんぬんというよりも企業のブランドイメージの低下が視聴率に響いているようなのだ。

「フジテレビという名前自体がかつてはブランドでした。しかし、今は『フジでやってるからつまらないんじゃないか』というところまできています。たとえは悪いかもしれませんが、事故や不祥事を起こしたメーカーの商品が売れないような状態なんです」(碓井教授)

先日、碓井教授が若い人たちから、こんな“冗談”を聞いたという。

「テレビのリモコンをいじっていてフジテレビが映ったときに、『あ、間違えた』と感じてしまったことがあったと。これが笑える失敗談のようになっている感覚が、今のフジの置かれている状況を象徴していると感じました。チャンネルを選ぶ埒外になっているわけです」


ある放送作家によれば、チャンネルごと視聴習慣がなくなってしまうと、フジテレビの局番(8)にも不利な面があるという。

「面白い番組をやっているというイメージがあれば、無意識にそのチャンネルからリモコンのボタンを押す。かつてはまずフジをつけてみて、そこから他局をチェックする流れになっていた人は多かった。今は、一番強い日テレからつけて、そこから5、6と順番に回して、面白そうなところで止まる。7チャンネルのテレ東も、池の水を抜いたりなど、見逃せない番組をやってますからね」

つまり、8チャンネルまでたどり着きにくいのだ。負のスパイラルに陥っているかのようなフジテレビ。低迷を脱却する鍵は何か。

「『バイキング』や『めざましテレビ』などが好調で、さらに4月にスタートするニュース番組に元NHKの登坂アナを起用する予定が、スキャンダルで降板など、いろんな意味で早くも話題です(笑)。『ザ・ノンフィクション』などの評価も高いですから、報道・情報系に力を入れていく方針もあるようです」

と前出の放送作家。

碓井教授もエールを送る。

「ブランドの信頼を回復するのも、一晩でイメージ回復というのはできないので、あせらず地道にいい作品を作っていくこと。そこを真剣に考えませんかと言いたいですね」


【本誌・太田サトル】


(週刊朝日オンライン 2018.1.28)


書評した本: 小路幸也 『駐在日記』ほか

2018年01月30日 | 書評した本たち



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

小路幸也 『駐在日記』
中央公論新社 1620円

物語の舞台は神奈川にある山合いの集落。昭和50年、前任地では刑事だった蓑島周平が、妻の花を伴い駐在所にやってきた。穏やかな人々が暮らす、のどかな田舎に、駐在夫婦の心を震わす不思議な事件が発生する。人情とノスタルジーに満ちた連作短編集だ。


コロナ・ブックス編集部 
『牧野富太郎~植物博士の人生図鑑』

平凡社 1728円

77年前に刊行され、現在も売れ続けている『牧野日本植物図鑑』。稀代の植物博士の人物像と業績にスポットを当てたビジュアル版自叙伝だ。学歴は小学校中退。自らを「植物の愛人」と称した牧野。精緻にして美しく、また温もりのある植物図にその人柄が窺える。


林 香里 
『メディア不信~何が問われているのか』

岩波新書 907円

著者はジャーナリズムが専門の東大大学院教授。今やメディア不信は世界同時多発の社会現象だと言う。新聞の信頼度がネットよりも低い英国。「おまえは、フェイク・ニュースだ」と大統領が叫ぶ米国。本書では豊富な海外事例を基に問題の本質に迫っていく。

(週刊新潮 2018.01.18号)